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ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

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ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)の商品レビュー

5.0 異質な感動
 同じ作者で以前読んだ「順列都市」が途轍もない構成の素晴らしい本だったので、期待して読みました。

 本当に面白い小説には、必ず感動があると自分は思っています。けれど、普通その感動は、小説が感情を扱った故での感動です。
 しかし順列都市での感動は、異質なものでした。
 そして期待を裏切らず、ディアスポラも知的興奮、新たな世界を見せてくれる、鳥肌の立つ様な感動を与えてくれました。

 もっとも、物語の半ば以上を過ぎなければ、この先どんな展開になるか全く想像がつかない点も、前作同様でしたが。
 ついでに理論に関する細かい内容が難し過ぎで私には理解できませんが、その辺はフィクションですし、また、構成が巧みなため、理解していなくとも物語は楽しめるようになっています。
 ただ、人間がソフトウェア化されている世界観故、身体感覚に基づく感情や感覚を扱っていないので、そういう物語でなければ楽しめない方には向きません。

 本の面白さには、色んな種類があります。少しとっつき難いですが、たまにはこんな本を読むと、新たな面白さの地平が開けること、うけあいです。
5.0 発明、発見のSF
「絶滅したとされて久しい発明、発見をテーマにしたSFの直系の子孫」とは
J.P.ホーガンの「創世記機械」の解説にある言葉だけど、
この「ディアスポラ」も、まぎれもなくその子孫であり、皇位継承者であると思う。
独自の物理学を緻密に、丁寧に序章から展開、解説してゆき、
最後に伏線がすべて合体して大きく展開をする部分には、感動を超えて畏怖まで感じてしまう。
それと同時に、この物語は「探求、冒険」の物語でもあり、それらが高度に組み合わさった、
まさに空前絶後の大傑作だとおもう(表現がクサいほど大仰だけど、真面目にそうなんですよ)

イーガンの話にドラマ性がないとは良く聞くが、
少なくともこの物語には壮大なドラマ、人間の葛藤や探求の心がぶ厚く塗り込められている。
特にオーランドという人物像は丹念に作りこまれていて、細部までくどく
心境を描写しない分、彼の言動から痛いほど彼の気持が伝わってくる。
そしてヤチマの最後の姿が、この物語のテーマをあらためて強く訴えかけてくる。

この小説は投げっぱなしで難解な解説部分が頻出するが、それがこの
物語のハードルを上げているのが残念だ。映像があれば「なあんだ、こんな事か」
と思う程度の内容なのだが、いかんせん文章があまりにも不親切だった。
図解を挿絵に入れてもよいのではないだろうか。

そういう理由もあってこの物語は映像との親和性が高そうな気がする。
大スペクタクルもちゃんと用意されているし。
映画化されれば大ヒットまちがいなしと思うのだが、いかに。
(途中、とっても映像化しづらそうな場面が多々あるけど。)
5.0 眩暈をよぶハードSF
スケール、内容ともにハードSFの最高の帰結点。
ここまでいきついてなお人類としてのアイデンティティが保たれているのが不思議なほど。
アイデアそのものは現代科学の延長線上にあり、実際の未来をリアルに想像できるのも良い。
多元宇宙の果てへと向かうスケール感の大きさ。
量子スピンに隠されたメッセージという、理解より直感をくすぐるアイデア。クラクラと読者を快く幻惑させてくれる、まさにSF小説。
4.0 ヒトと宇宙の行く末
現代ハードSFの極北と評価される長編。
SF好きならば,好む好まざるにかかわらず,読んで損はしないでしょう。賞賛するにせよ,批判の材料とするにせよ。

物理学の素養のない私にはほとんど記号のような議論がちりばめられていますが(専門の方がどう読むのかむしろ興味深い…),イーガンの小説に一貫して流れる,自己同一性の問題は本作でも太い幹となっています。端的には,「自分のすべてがソフトウェア化されたとして,それはなお自分か?」,さらに「ソフトウェア化された自分がコピーされたとして,自分とコピーの関係は?」といったことです。SF的な道具立てはともかく,このような自己同一性の問題に対するひとつの解答は,文系的思考の人間にも十分に楽しめるものです。

さらに,本作で描かれる,人類の行く末→宇宙の行く末は,私のような素養のない者にとっても,圧倒的なものでした。ヒトの想像力の限りなさを示した一作といえるでしょう。
なお,難しい議論については,巻末に用語集もついています。
4.0 脳みそをふりしぼって
 ソフト化された人類が深宇宙に旅立ち銀河の謎を探求する様が、強固な物理的理論武装で肉付けされ描かれる。確かに難解であるが、筋立てはストレートな冒険SFなので、混乱する事は無い。
 解説では小松左京の「果てしなき流れの果てに」が引き合いに出されていたが、僕は手塚治虫の火の鳥を想起した。宇宙が入れ子状に重層的に重なっている、てなところとか。やはり偉大だ、手塚先生は。
 ともあれ、久々に脳みそを振り絞って活字を追った。今度は軽めの本にしてみるか。

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