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『独裁者の城塞』で<時>の秘密の歴史をセヴェリアンに教えたあとマルルビウス師は語りました。 「われわれはふたたび星々にいくことはない。ある種の神格としていくようになるまではね。しかしその時は今から遠くないかもしれない。おまえの中で、われわれの種族のすべての発散的傾向が統合を果たしたのかもしれない」 どうやらセヴェリアンは宇宙帆船に乗ったようです。船内でのセヴェリアンは暗殺未遂や船員の反乱などのため逃げたり闘ったりと大忙し。宇宙航行に関してお得意の思索を披露するする余裕もあまりないようです。当然、その活劇描写の細部には見えてるのに見えないような場所に思わぬ転換点があったり、『新しい太陽の書』の秘密の種がまかれてたりしています。懐かしいものとの再会や新たな登場人物たちとのロマンス、友情、裏切りなどもあり、オリエンテーションをつけるのが一杯一杯のところで舞台は移ります。そこで謎の宝庫のような出合いと会話を経て例の審判へ。 その後、読者は『新しい太陽の書』を俯瞰する視点を得ることができ、セヴェリアンがウールスに足跡を残すのを時の回廊から覗くように見ることもできるのです。ただその場面は、セヴェリアンのヴァージョン変更やなんらかの修飾がかかってるため、かえって謎を広げるかもしれません。 <時>の秘密の歴史は、それを観察する人間と切り離しては理解できません。ここが分割線だという名剣ももはやありません。分離困難な複雑に絡み合った世界を歩んできたセヴェリアンとは何ものなのか、そしてセヴェリアンとともに疑問符多発のこの行程を何度も歩きたがる読者の悦びとはなんなのかということを考えさせるのがこのシリーズの魅力です。ただし本書には訳者G.Wの署名はありますがセヴェリアンのあのお決まりの最後のフレーズはありません。それは当然の帰結かもしれませんがやはり少し寂しくもなります。人類とポストヒューマンの織りなす時空のサイクルをこのように悠然と語れる人はほかにいないでしょうから。