ふたたび「長き眠り」
1996このミス 5位
95年文春ベスト10 3位「そして夜は蘇る」「私が殺した少女」「天使達の探偵」に続く、私立探偵・沢崎シリーズの第四弾。
およそ400日ぶりに東京に戻った沢崎は、11年前の夏の甲子園大会準決勝での八百長の疑惑から姉が自殺した魚住の依頼を受け、自殺の真相を追うこととなる。世界を代表するハードボイルド作家、レイモンド・チャンドラーをこよなく愛し、その文体にも影響をうける作者であるから、本作品のタイトルも、チャンドラーの代表作「長いお別れ」と「大いなる眠り」からとられたのであろう。本作も前3作に違わぬできで、決して期待を裏切らない。作者の作品の魅力は、もちろん私立探偵・沢崎の魅力と、そのチャンドラーへのオマージュである単文を主体とした文体からくるなんともいえぬ読後感であるが、もう一つ付け加えるとすれば、ミステリーとしての骨組みもしっかりしているところであろう。
各作品の最後で、遅筆をわびている作者であるが、本作も全作から5年をへて発行された。1995年の本作品発表後、ふたたび「長き眠り」に入ってしまったが沢崎シリーズの第二期のスタートが待ち遠しい。
なお、文庫版の巻末には、「死の淵より」という短編が、あとがきにかえて添えられており、作品の最後に「それは新たな事件の始まりだった。」と結ばれている。期待して次回作を待つとしよう。