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老ヴォールの惑星 (次世代型作家のリアル・フィクション ハヤカワ文庫 JA (809))

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老ヴォールの惑星 (次世代型作家のリアル・フィクション ハヤカワ文庫 JA (809))の商品レビュー

4.0 生への絆
 状況設定こそSFのキモである。四編いずれも、すべて違った状況設定で描かれるが、特定の二人に結ばれる絆の強さが印象に残る。それは愛や情動を超えた強い信頼である。
 「漂った男」で描かれる極限状態が、想像を書きたてる。そして最後に示される生への熱く強い意志…。刹那的な享楽や安易な自殺がはびこる21世紀初頭の日本に、ぜひ読まれるべき一編だろう。
5.0 ひとつのカラクリをベースにしたハード的SF短編集
各短(中)編は、それぞれのカラクリや設定をベースにして、突き詰めたらこんなストーリーができた、って感じの小説です。
ハードSFではないけれど、ハード的ではあります。ハード的というところが味噌で、肩に力を入れずあっけらかんとして楽しめます。すべての小説のベースにホジティブ志向があります。その意味でも楽しめます。
5.0 渋いけれど、老練ではない
渋いですね。ずしりと持ち重りのする短編が揃っています。
でも、老練という感じはまだまだ。
勢いあまって突っ走ってしまったり、理屈倒れになりそうな点(他の方もおっしゃってますが、「幸せになる箱庭」はちょっと落ちる印象かな・・・)も見受けられますが、何より生きることに対する肯定感、共感が全体を強く貫いて、それが物語の根底を支えている感じ。
独りよがりなペシミズムがどこにもないのが嬉しい。

同性としては、出てくる女性の造型がちょっと微妙・・・という気がしないでもないですが、主人公はみんな魅力的な血肉を備えています。
「老ヴォールの惑星」の生命体の造型や、「漂った男」の主人公たちのやり取りなど、どこかほのぼのさせてジーンとさせるような箇所が、もっともっと増えてくれるといいですね。
5.0 圧倒的な説得力。
日本における新時代のSF作家の中でも、この人の名前は一際目立っている。SF好きなら眼にした事があるかもしれない。ただ、著者は特に長編で有名である。短編ではどうなのか、私は著者の真価を確かめるつもりで購入した。そして、その信頼は裏切られなかった。
収録されている四つの短編全てが質が高い。全て違うテーマを設定した短編ながら、全部の味がそれぞれ完成されている。また、それでいて著者独特の哲学と風通しの良い文章は通じている。ひょっとして、この人の真価は短編なのではないか、そう感じさせてもらう程の完成度だ。
私個人としては、壮絶なシチュエーションと強烈な幕切れが鮮烈な最後の短編が印象に残っている。読後に、不思議な感動と希望に基づく爽快さが残る点も評価したい。私にとって、ここ数年間を通して最も印象に残る短編である。

最後にこれだけ言っておきたい。これで短編作品の刊行が終わるのは日本SF界の大きな損失である。是非とも短編集第二段も刊行して頂きたい!
5.0 「オチ」に説得力
過酷な環境の惑星に発生した特異な知性生態系と人類のファーストコンタクトを描く表題作をはじめ、魅力的な中編4つを収載。
他の三作はいづれも、極限的な環境における人間の反応・適応を通して、ヒトが社会を作るのか、社会がヒトを作るのかを問う。中編集という形式ではあるが、ある意味でオムニバスもしくは同じテーマの変奏曲集といった趣きである。舞台はそれぞれに、食べ物も水も限られ他人を信じられない闇の世界(「ギャルナフカの迷宮」)であったり、生存を脅かすものは何も無い代わりに刺激は一切無く全くの孤独(「漂った男」)、あるいは望むものが全て具現化される仮想空間(「幸せになる箱船」)と様々であり、その結末も三様である。私はどちらかと云うとややユーモアのセンスさえ感じさせる「漂った男」が一番おもしろかった。

80〜90年代の日本SF界の主流であった神林長平や栗本薫、大原まり子などの作家たちは、それこそ卓越したアイデアや世界を見せてくれたが、正直やや難解な作風が多く読破し消化するのに随分とエネルギーを要す傾向があった(高校時代ならばともかく、今となっては読み進める自信はない。とほほ)。読後に妙な「ザワザワ感」が遺り、時に不快だったりもした。それらと比べ小川一水は読み易い。アイデアが安易だったり、「センス・オブ・ワンダー」が先の作家に劣るというわけではない。あえて簡潔に述べるなら、「オチ」に説得力があるというところか。
今回私は初めて著者の作品に触れたが、もう1つ2つ手に取ってみたいと思う。

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