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マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

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マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)の商品レビュー

4.0 疾走する虚無
日本SF大賞を受賞したマルドゥック・スクランブルの続編。
少女娼婦バロットと中身親父の万能ネズミ型アイテムウフコックの魅力的なコンビが活躍する前作とはまた違い、より人の醜さや都市の暗黒面が描かれてます。
「/」や体言止めを多用した独特の文体には最初面食らうけど慣れれば疾走感を生み出すこのテンポが心地よくなる。
やや「〜ように」という直喩の多用が気になるけど比喩も上手いし銃撃戦のシーンは迫力たっぷりでかっこいい。
寡黙な主人公ボイルドと相棒ウフコックの心温まる交流はもちろんユーモアに富む仲間内の会話ややりとりが痛快(「誰か外傷性ストレス障害を抱えてしまった者はいるかね?」「そりゃお前のダチの名前か?」/「「あたしが上に乗ってもいいか聞きたいね」「上下関係を巡るトラブルはパートナーシップにつきものだ」)。

魅力的な悪役にも注目。
個人的には若き野心家ギャングにして屈指のガンファイターニコラス・ネイルズがお気に入り。「棺桶に杭を打ってやるぜ」の決め台詞に痺れる。

拷問シーンなどえぐくてグロテスクな描写を含むので好き嫌いは分かれそうだけどハードボイルド六割SF色四割くらいの比率の小説が無性に読みたい人には猛烈におすすめ。新旧世代交代に火花を散らすギャングの抗争や資産家一族の暗闘などが結構な密度で書き込まれてます。

スクランブルは正直SF色が強くて最初に読んだときはぴんとこなかったんですが(バロットが蘇生する過程とかカフェのシーンとか)こっちはすんなり世界観に没頭できました。ボイルド以下09のメンバーは各々肉体的な改造を加え特殊能力をもってるんだけど、カラクリ仕掛け的なギミックを応用したアクションシーンは難しい知識がなくてもテンポが良いんでノリで読めます。
余談ですが大森望氏の「冲方丁が書く忍法帖」という発言には全然そんな発想なかったんでびっくりしました。
まあ確かにそう読めなくもないけど…。
5.0 重厚、かつ、スピード感あふれる大作
前作「マルドゥック・スクランブル」を超える超大作。
読後、しばし呆然としました。

独特の文体に、最初、抵抗を感じるものの、しばらく読み進めると、逆にハマッていきます。
というのは、スラッシュ多用のこの文体は、アクションシーンにおいて特に効力を発揮します。
通常の文体に比べて情報量が圧倒的に多く、まだろっこしい場面説明に文章を費やすことなく、
スピーディーかつスリリングにアクションシーンを展開させます。
これが実に心地よい。
ある意味、映画以上に、ビジュアル的な手法であると思いました。

テーマがテーマだけに、吐き気をもよおすようなシーンもありますが、
前作以上に、登場人物たちの造形描写も鋭く、重厚感あふれる作品。
前作をお読みの方は、ぜひご一読を。


4.0 刹那的なスピード感
ダッシュとスラッシュを多用した文章は慣れるまで読みづらく、また、序盤で主要キャラクターがたくさん登場するので、とっかかりはあまりよくありません。最初さえ我慢すれば、残りは面白く読めると思います。

この物語の結末を知っているせいか、09メンバーが成果を挙げて法案が軌道に乗れば乗るほど、いつか待っている破滅が頭をよぎって哀愁を感じてしまいます。ダッシュやスラッシュを多用しているために生まれるスピード感が、登場人物たちの刹那的な人生を暗に表してるんじゃないかと感じました。

次が楽しみです。
3.0 あのマルドゥック・スクランブルの続編としての評価ならば辛めです。
 あのマルドゥック・スクランブル全3巻の続編、というかあの世界のシリーズとしてのマルドゥック・ヴェロシティの評価は非常に辛めで星2つでもいいくらいだと思います。
 前作が非常に斬新かつ綿密に練られた文体及び構成でぐいぐいと読者を引き込むタイプのエンターテイメント性の高い作品で、主人公の少女の非日常的日常と暗黒世界のフリークスの対比、世界観の設定やウフコックのギミックといったものが非常に全3巻にわたってバランス良く主人公の復讐と絡めて、よく書かれていただけに、贅沢を言いたいのかもしれません。


 前作で、近親相姦、未成年虐待や法廷論争、アンダーグラウンドな匂いの犯罪の数々、フリーキーな軍事的/趣味の肉体改造と色々詰め込んでいるのなら、今作では、それをもっとセンセーショナルにスケールアップしたほうが、ファンには分かりやすいとは思うのですが、その作戦で行くならば、肉体改造組の他に、どのキャラクターが近親相姦担当で、どのへんがフリークス担当...というのが、ある程度名前や登場の仕方から想像が付きそうなのは、残念です。
 しかも前作が主人公の生存のためという前向きなテーマだったのにくらべ、今作は主人公(前作の敵役)がマルドウック・スクランブルに至る前に全てを失っていくその経緯という、ダークなもの。今回の主人公は虚無というか死に向かって突っ走るしかないというテーマはもうちょっと丁寧に扱って欲しかったかなと思うのは、わがままなのでしょうか?

 今回は、文体はよく言えば実験的、悪く言えば手抜きな印象で、ウブカタ得意の言葉遊びがなんだか煩雑に感じます。構成も、一巻でほとんどの主要キャラクターが登場しているらしい割に、文体のせいで各キャラクターの個性が分かりやすく描かれているとは感じられないため、2巻に期待していいのか、それとももっと文章と構成を練ってくれと苦情を言っていいのかも分かりません。この文体で、英単語や外来語のルビが多いと実力のない翻訳者が訳した海外ものを読まされているみたいなのも減点の要因。ここまでやられると、読んでいて、著者がのたうちまわりながら書いているような痛さがあるような気がして、ストーリーの骨格としてはエンターテイメント性があるのに読んでいて辛い作品と個人的にいうしかありません。
 クレージーな世界観と、各キャラクターごとの綿密なSF的ギミックの割り振り方の対比は面白いと思うんだけど、圧縮進行というか、尋常ならざる速度(ヴェロシティ)で暗黒面に突っ走る感じだけの内容だと...内容如何では二巻目でげんなりしてしまいそうな予感。

 以上の事は、マルドゥック・スクランブルの続編としてこの作品を読んだ感想。
 もし、前作を未読ならば、やけにセンセーショナルで、文も荒れている感じだけど、荒唐無稽で面白いSFじゃんと、次巻を素直に待ち望んだ事だと思います。もしそうだったら、星4つくらいの評価だったんじゃないかと。
 だから、間をとって星3つ。
4.0 読む人を選ぶかも
 前作とかなり文体が変わっています。
 韻を踏んだり、ぶつ切りのセンテンスやスラッシュなどの多用などジェイムズ エルロイの影響がかなり見られるように思います。
 慣れていないと一寸取っつきにくいですがはまるとぐいぐいとのめり込めると思います。エルロイファンの方は買いでしょう。

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