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インドの魔窟カルカッタ。 腐敗と瘴気に満ちた魔都カルカッタ。 存在することすら呪わしい場所カルカッタ。 本書で描かれるカルカッタは、誇張されてる部分があるとはいえ悪夢の都市だった。 バラックのような崩れかけた建物。路上のあちこちに寝転ぶ痩せこけた人々。建物と建物の間に捨てられ て積み上げられた生ゴミの山。独特の臭気。はびこる病魔。川に浮かぶ膨らんだ死体。 およそ、同じ人間が住む場所とは思えない、混乱と汚濁に満ちた場所だった。 前から感じていたことだが、シモンズは死体に執着するタイプの作家のように思われる。 彼の描く死体の描写は生々しく且つ忌まわしい。 本書にも数多の死体が登場するが、そのすべてにおいてシモンズの執着がうかがえる。 暴力によって命を奪われた死体、生前の面影を破壊された死体、死して物に変わってしまうことの恐怖。 シモンズが、本書で理不尽な暴力の悪循環を主人公に断ち切らせてみたかったと語っているように、主人公であるルーザックは自分が受けた仕打ちに対する報復を断念する。 読者としては、この終わり方に少し不満が残るかもしれない。だが、やられたらやり返すというこの短絡的な行動パターンを敢えて崩したところに本書の特異性があると思われる。 それが成功してるかどうかは読者の受けとり方次第ということだろう。
いけにえの血をすすり、肉を食らう、破壊と殺戮の黒い女神カーリー。理知的な西洋の詩人ルーザックは、混沌の魔都カルカッタで、この女神が歌う、恐るべき調べ、いわれなき暴力の旋律に巻き込まれてゆきます。悪夢のようなホラーでありながら、それだけで終わらないところは、さすがダン・シモンズ。だいじょうぶ、最後にはちゃんと救いもあります。