必死の美しさ
本作の著者が自ら述べるところによれば、彼の作品に一貫しているテーマと
は、人と人との交流についてのものなのだという。本作では、人々が完全に互
いの存在を寄り添わせることで、なんとか自分自身を持ちこたえているモデル
が示されるわけだけれど、それは倫理的にみれば人間についての極めて当たり
前の存在形態であるといえるだろう。 作品中の主要登場人物は、互いの心の交流に伴い、みなが同方向の感情へと
収斂されてゆく。しかし、それはまるで多重人格症の中に見る個々の差の昇華
でしかないかのようだ。結局実際は、自分の存在について完全に理解してもら
うなんてことは絶対にありっこないわけで、いつの日かそんな事がありはしな
いかと願うってしまうところに恐ろしい不幸が潜んでいる。作品に漂う尋常で
ない緊迫感は、当たり前であるかのような交流の形態が否定され、それが極限
状態にのみ見出しうると捉えられているところにある。しかしその交流もまた
一つの偽りにすぎない。同一人物であるかのような交流は、最早交流といえる
代物ではないからである。
しかしなおこの作品を貫いている美しさは、もう全ての人たちが偽りだと見
積もった以上のような人間の交流の問題について、最後の最後まで必死にしが
みついているその姿にある。一途な必死さは、それが誤りであってもなお人を
感動させるだけの力を十分に持っているのだ。
「ファイト・クラブ」より完成度高し!
とうとう文庫になったパラニュークの飛行機墜落カルト
預言青春成長小説。デイビッド・フィンチャー監督、ブラッド・ピット主演の
「ファイト・クラブ」が話題になったこともあり、そちらが
パラニュークの代表作と見なされがちだが、今まで日本で
刊行された彼の小説で一番面白く、著者独自の文体が
切れまくっているのは、間違いなく「サバイバー」の方だ。