絞首刑がエンタテイメントだった時代
ヴィクトリア朝時代を舞台にしたクリッブ部長刑事シリーズの中の1作。当時は死刑が執行されるとその死刑囚の蝋人形がマダム・タッソーの蝋人形館に設置されるのが通例だったそうで、そんな時代背景をベースにした作品です。ミリアム・クローマーという女性が使用人を殺した容疑で死刑判決を受けるのですが、判決が出た後で彼女には犯行が不可能であったことを示す証拠が現れ、クリッブが事件の再調査を命じられるというストーリーです。結末は極めてあっけないもので、本格好きにはやや物足りないかも知れません。しかし、死刑執行人ジェイムズ・ベリーが蝋人形館との商取引を有利に運ぶべく行う様々な活動が、クリッブらの気づかぬところで事件に思わぬ波紋を投げるという趣向などはなかなか面白かったです。当時は絞首刑というものが大衆にとってエンタテイメントだったこともよくわかります。
蝋人形になる前に
クリッブ部長刑事シリーズ。
一旦は殺害を認めて死刑が決まった女に、彼女の無罪を示す新証拠が。
クリッブは上司の命令で密かに再調査を始める。一人の命と警察の威信がかかった再調査に、処刑のタイムリミットが迫る。一方では、渦中の女性にもまだまだ多くの謎があるようだ・・・。証拠は果たして本物か?最後までドンデン返しの楽しめる傑作。さすがは現代イギリスの巨匠ラヴゼイと思える、期待通りの作品だ。
クリッブ部長刑事シリーズ自体が、処女作でもある『死の競歩』をはじめ、非常に地道な捜査物の傑作揃い。その中でも最高に切れのある白眉。