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ウッドストック行最終バス (ハヤカワ・ミステリ文庫)

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ウッドストック行最終バス (ハヤカワ・ミステリ文庫)の商品レビュー

5.0 《悶絶する名探偵》モース、最初の事件
文庫カバーのあらすじには本作の探偵役・モース警部のことを「天才型の探偵」
と書いていますが、それはちょっとどうなんだろうと感じてしまいます。


彼の捜査は、たしかに手持ちの手がかりに基づく直感が主で、
地道な聞き込みなどは、それを裏付ける手段に過ぎません。

しかし、データが不足している際には想像で自分の仮説を補うため、たいていは
間違い、また一から推理をやり直すといった試行錯誤を繰り返すことになります。

どうも《神のごとき名探偵》という存在とは程遠いですし、犯人を油断させる
ために、無能を装うコロンボや古畑といったタイプとも一線を画しています。


おそらくモースは、ミステリの探偵役が体現する「推理する装置」
としての側面に特化したキャラクターなのではないでしょうか。

託宣を下すだけの超越者ではなく、無残な失敗を曝しながらも、臆せず
推理し続けることで、推理自体の魅力を提示する存在だといえます。


さて、本作では事件について様々な推論が繰り広げられているのですが、その中でも
特に秀逸なのは、犯人の条件を挙げていき、机上の数字操作から犯人をたった一人に
絞り込むくだり。

大真面目に数字に取り組むモースがおかしいのですが、
その稚気と機知こそ本格の精神でしょう。


また、この趣向は米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』に収録された
「孤狼の心」に採り入れらているので、ぜひ併せて読んでみてください。
4.0 「本格」的試行錯誤
夕闇迫るオクスフォードで、ウッドストック行バスを待っていた二人の娘は、中々来ないバスにしびれを切らし、ヒッチハイクを始めることに。その晩、ウッドストックの酒場の中庭で、そのうちの一人の惨殺死体が発見された。杳として行方の知れぬもう一人の娘。なぜ、彼女は名乗り出ないのか? テムズ・バレイ警察のモース主任警部の推理は二転、三転、壁に突き当たりながらも徐々に真相に近づいていった…。

モースものは、それまで「キドリントンから消えた娘」と「森を抜ける道」しか読んでいなかったが、いずれも読後感はすっきりせず、どこかごまかされたような、煙に巻かれたような感じを抱いていた。本作でもそれが残る点は同様なのだが、処女長編だけあってか、比較的シンプルに「試行錯誤」が展開されており、衒学的な部分も少ないような気がした。

それと、中年のくたびれた印象を持っていたモース主任警部をめぐるlove affairは意外であったが、これが結構読ませる部分で、小説に効果的な陰影を与えている。
5.0 混沌として捜査とモースの人柄
今頃レビューを書くなんて、ずいぶん間抜けだと思いますが、感心したので自分へのメモも兼ねて。どこに連れて行かれるか分からない混沌とした推理と捜査の迷走、思い込みが激しくて乱暴なモースの個性が面白いです。こういう形で推理小説として提供できるのだなぁと感服。テレビも見ましたが、あちらも面白いですね。このシリーズは、原作の2倍もテレビオリジナルが放映されたこととオックスフォード周辺が舞台ですから、現地では観光ツアーが今も人気です。
3.0 モース警部だけが面白い
作者のデビュー作で、次作の「キドリントンから消えた娘」と共に代表作と言われている。作者はクロスワード・パズル(イギリスでは日本と比べ物にならない程盛ん)の鍵作りの名手としても著名。

本作も次作も事件としては単純で、普通の警察が普通に(科学)捜査すれば簡単に解決する筈の事件(高々女子大生の失踪事件なのだ)を、モースという奇矯な警部に事件を担当させる事によって錯綜した事件に見せかける手法を取っている。このモースが発案する解決というのが突拍子のない面白いもので、ここが読み所である。科学的捜査を排除して、モースの独創性(?)に賭けると言う作者の姿勢は、上述の鍵作りの名手の自負心であろう。その代わり、最終的に提示される解決が、途中で披露される解決案より優れているとは限らない。

モースの奇抜なアイデアを楽しめる方にのみ、お勧めできる作品。
4.0 モース警部にはまったく共感できませんでしたが
 最初からつかみはOK、最後まで飽きさせずに一気に読ませてくれます。自信たっぷり「これだ」と解決したかのように見せて、事実はするりと警部の手をすり抜けて振り出しに戻る、ということが何度もあっていらいらさせられるのですが、こじつけではなくちゃんと納得できる説明がついているのでどうしようもありません。

 書かれた時代が古いので今だったら科学鑑定であっという間にわかってしまうようなことが見過ごされていたりしますがこれは仕方がないですね。ストーリーテリングは巧みなのでシリーズの次の作品も読んでみるつもりです。

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