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邪悪の家 (クリスティー文庫)

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邪悪の家 (クリスティー文庫)の商品レビュー

3.0 作者作品中、おそらく最もマヌケな犯人
作者中期傑作群(1930年代の作品群)の初頭を飾る代表作で、多くの解説で傑作と評されてはいるが、ベスト10に評されることは決してない。その理由は2つある。

1つ目の理由は、推理以前に読者に自然と犯人がわかってしまうということ。
作者は後に本書と同じプロットを用いてマープルものを執筆しており、そちらの方が一般的にはベスト10級と高く評価されているが、その作品ですら本書の欠点は克服されていない。それはこのプロットを用いた作品の宿命である。

そして、もう1つの理由こそが本書の最大の欠点で、作品の中においてさえも犯人はいつかは必ず誰の目にも明らかになるということである。
犯人のターゲットとされた人物と間違えられて別の人物が殺される。そのため、元々ターゲットとされた人物が殺されるか犯人がつかまるかしない限り、この事件は終わることがない。
この悪循環を断ち切るためには犯人の身代わりとなる人物が必要だが、犯人自身はこの身代わりを用意していない。計画的な犯行で、そんなマヌケな話はなかろう。

後のマープルものでは、この2つ目の欠点は一応克服が試みられるが、結局は失敗に終わる。しかし、その失敗から生じたほころびをごまかすために、犯人は次々と殺人を犯さなければならなくなるわけで、それは充分筋が通っており犯人の心理も理解しやすく、その点、本書よりこのマープルものの方が高く評価されるのは当然のことである。

以上、本書についてマイナス要素ばかり記したが、犯人が犯人ではないように思わせるための偽の証拠や工夫には感心させられる。ストーリーも面白い。
5.0 数多いクリスティのエポック・メーキング作品のひとつです。
みなさん書いていますが、一般には「エンドハウスの怪事件」というタイトルの方がメジャーかな?でも最後まで読んだら「邪悪の家」というタイトルの方が内容にふさわしいタイトルであるのかな…と思います。

ポワロが犯人を疑い始めるそのきっかけとか、見逃していたある小さな矛盾とか、このあたりなかなか説得力があって面白い。あと、動機もきちんと推測できるようになってるのはいいですね。これはクリスティ作品の大きな魅力だと思います。本作と同じ仕掛けを用いたミステリは山ほどあると思いますが、単なる一発アイデアのミステリで終わっていないところはさすがですね。
4.0 ポアロ、操り人形へ(?)
登場人物一人一人が奥底に“何か”を秘めていますが、
最後になってその人のその“本質”が明らかになる過程は
納得のいくものとなっていると私は思います。
ただ、一つ注文をつけるとすれば、題名は“Peril at End House”ですが、
その“House”の影が薄く感じました。
“House”そのものをもっとミステリーにいかして欲しかったと思います。
5.0 ポアロがエンド・ハウスで演出・上演してみせるお芝居仕立ての結末が見事な、初期の傑作
「邪悪の家」の原題は、「PERIL AT END HOUSE」であり、他社の文庫本、テレビ版「名探偵ポワロ」、NHKアニメ「アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル」では、全て「エンド・ハウス(の)怪事件」の邦題で発表されている作品である。余談だが、アガサには、原題そのままの「ねじれた家」という作品もあり、私などは、未だに、両者を混同してしまうのだ。こうした紛らわしい邦題の付け方は、何とかならないものだろうか。

さて、物語の方だが、イギリス南部海岸の観光地のホテルで夏の休暇を過ごすポアロは、エンド・ハウスの若く美しい女主人ニックと知り合う。ニックは、三日間に三度も命を狙われ、今また、ポアロの目の前で、狙撃されたのだ。ポアロは、五回目を警戒して、エンド・ハウスに乗り込むのだったが、ダンス・パーティの夜、遂に、悲劇が起きる。

終盤に、事件の真相を解明したポアロが、未知の犯人をあぶり出すため、関係者が一堂に会する中で、エンド・ハウスで演出・上演してみせるお芝居のシナリオは、どんでん返しの終幕付きで、見事の一語、アガサの卓越したストーリー・テラー振りの面目躍如といったところだ。

ちなみに、この作品が出版された頃は、アガサは、マックスとの二度目の結婚の直後で、日常生活を存分に楽しむとともに、フルスピードで相当数の作品を一気に書き上げていた時期であり、アガサはこの当時の作品の記憶があまりなく、この作品についても、「わたしの小説の中ではまるで印象が残っていないし、書いた記憶さえ思い出せない」と、さんざんな言い様なのだが、「ようやく自分の書くものに自信が持てるようになってきた」と言っている時期でもあり、初期の傑作の一つであることは確かだろう。

4.0 これは「エンド・ハウスの怪事件」です
創元推理文庫では『エンド・ハウスの怪事件』として翻訳されている作品です(間違えて両方買わないように!)。クリスティにしては地味な作品で、トリックは決して大仕掛けなものではありません。しかし、じつはかなり掟破りのことをやっています。何をやっているかを書いてしまうと興をそぐので書きませんが、読んでみると「なるほど、クリスティはこれをやりたかったのだな」とわかると思います。

もうひとつ面白いのは、登場人物たち(=容疑者たち)がみんな怪しい言動をしていることです。もちろん、殺人事件に直接関係あるのはごく一部の人なのですが、それでは他の人達はなぜそんな行動を取るのかということにポワロが頭を悩ませます。それらの謎の中の最後のひとつが明らかにされるところでこの物語は終わるのですが、その謎は事件に直接の関係はありません。それによって陰湿な事件にもかかわらず、読後感を微笑ましいものにすることに成功しています。

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