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三幕の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

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三幕の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)の商品レビュー

3.0 『ABC殺人事件』より先に読まないといけない。
本書は作者作品中では比較的知名度の高い作品であるが、国内での知名度の高さは、ひとえに江戸川乱歩が作者ベスト8に推したことによるものだろう。
本書に描かれる第一の殺人が、犯人の真の目的とは別の理由で犯人には利害関係のない人物に対し「計画的に」行われたことを捉えて、真の目的のためには手段を辞さないという犯人の冷酷さを評価したものではないかと思う。また、『愛国殺人』を同じくベスト8に推したのも同じ理由ではないかと思う。

しかし、逆に私は『書斎の死体』のレビューにも記したことだが、まったく無関係な他人を計画的に殺すという点がイマイチしっくり来ない。『愛国殺人』の場合にはその見解を犯人が供述しているので、まだ納得はできたが。

それと、本書を読む場合には『ABC殺人事件』より先に読むことをお勧めする。(本書を読むことをお勧めしているのではない。先に『ABC〜』を読んでしまったら、本書はもう読まない方がいい、という意味。)
本書の第一の殺人は、『ABC〜』のカムフラージュの殺人とは異なるものの、読者から見れば状況が似通っており、まるで『ABC〜』のマイナーチェンジ版のような印象を与える。実際私は『ABC〜』の方を先に読んでいたため、「なんだ、『ABC〜』と同じじゃないか。それも地味だし」と思って、そのせいもあって余計に面白く感じなかった。
4.0 犯罪者の肖像
 引退した俳優が主催したパーティで善良な老牧師がマティーニを口にした途端死んだ・・・人に恨みをかったり、金銭問題に巻き込まれるようにも見えない純朴な老牧師がなぜ?数ヶ月後、俳優の友人が同様の状況で死んだ・・・二つの事件に繋がりはあるのか?ポアロでさえ、途方にくれるが・・・三幕仕立てで送るクリスティの佳作

 早川文庫版は、冒頭に「演出」「演出助手」「衣装」「照明」とスタッフが紹介されている。スタッフの欄に目を通すと登場人物の内からそれらしい人を振ってあり、遊び心にあふれている。ちなみに「照明」は「エルキュール・ポアロ」・・・真実を照す人なんですなぁ・・・

 正直、云ってこの作品のトリックは、かなりとんでもない。「ふざけるな」と本を叩きつける人がいても驚きはしない。賛否両論は、必死かもしれない。しかし、自分は、感心した。かなりとんでもないトリックではあるが、最後に明らかにされる犯人なら、いかにも実行しそうなのだ。何気なく読んでいる内は気付かなかったが、要所、要所にさりげなく、時には大胆にその人物の特性が描かれていて、云われて見れば・・・いかにもこの人なら・・・と言う当たりが心憎い。読み終えてみるとこの犯罪自体が、犯人のそのもの・・・いうならば、「ある犯罪者の肖像」なのである。

 5星でも構わないが・・・完成度と言う点で少々落ちる気がするので、星4つ。とはいえ、衝撃度は星5つでも足りないかもね・・・
3.0 万人向きではないかも知れない
犯行の動機がとてもクリスティらしいと思いました。まさかと思わせつつも、細かい人物描写が説得力を生んでいます。また、この作品が書かれた時代のイギリスでは、違和感なく受け入れられた題材なのかも知れないと想像します。が、一方、演劇に明るくない私は最後までノレませんでしたし、犯行の動機にもさして納得することができませんでした。

しかしながら、演劇好きの方、殊にイギリスの舞台がお好きな方には、ワクワクする作品なのではないかと思います。そして、エラリー・クイーンのドルリー・レーン・シリーズ(悲劇四部作)がお好きな方にも、もしかしたら…!?
5.0 クリスティーの新訳に触れることのできる幸せに思いを巡らせて
長年にわたって「ハヤカワ・ミステリ文庫」などで読み継がれてきたアガサ・クリスティーの作品が、「クリスティー文庫」として装いを一新、2003年10月から2004年11月までに、全100冊が刊行される。

クリスティーの作品は、贅肉を削ぎ落とした、簡潔明瞭でセンスのよい文体で書かれており、元々、テンポよく、流れるように読み進めることができ、読み疲れしないのが特徴だが、新文庫化にあたり、活字が一回り以上、大きくなったことによって、一層、読みやすくなったことは、高く評価したい。

ただ、新文庫化にあたり、さまざまな点について見直しを図りながら、新訳を一部の作品にしか取り入れなかったのは、どうしてなのだろうか。おそらく、今後、数十年にわたって「クリスティー文庫」として出版し続けていくのなら、この際、全作品を新訳で出してほしかったというのが、クリスティーファンの偽らざる本音ではある。

さて、この作品は、その待望の新訳本である。三幕仕立ての殺人事件、その中でも、偶然の産物としか思えない第一幕の殺人が、ポアロを混乱させる。狡猾な犯人が仕掛けたトリックを、ポアロがどのように看破するのかが見どころの作品であるが、新旧の文庫本を読み比べてみると、ほとんど同じフレーズのない大きな違いに驚かされる。図らずも、日頃、我々が親しんでいる翻訳物は、原作を訳者を透かして読んでいるに過ぎず、訳者の感性、センスや、時には創作的能力が色濃く反映されていることとか、日本語の奥深さや表現力の多様さに思いを巡らす結果となったが、それと同時に、どちらも、クリスティー以外の何物でもなかったこと、ポアロ以外の何物でもなかったことも事実である。

考えようによっては、ミステリファンの永遠の宝ともいうべきクリスティーの作品に、さまざまな訳者のそれぞれの訳を通して触れることのできる我々日本人は、世界で最も幸せな国民といえるのかもしれない。

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