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雲をつかむ死 (クリスティー文庫)

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雲をつかむ死 (クリスティー文庫)の商品レビュー

2.0 「密室殺人」ではない!
本書の説明に「大空を飛ぶ飛行機という完全密室で起きた異様な事件」と書かれているが、本書は「密室殺人」ではない。

「密室殺人」とは、部屋にカギがかかっているかどうかは別にして、またそれが室内であるかどうかは別として、犯行現場への出入りが不可能な状況での殺人を指す。
対して本書の殺人は、飛行機内という「密閉空間」の中で発生し、その「密閉空間」にいる乗員・乗客のみに容疑が限定されるというだけに過ぎない。
だから本書の説明の「完全密室云々」は、出版社が本書の売れ行きを伸ばしたいがための誇大表示で、だまされないように気をつける必要がある。

本書はクリスティーの作品としてはまあまあの出来で、ヒロインのロマンスを絡ませてそれなりに面白く仕上ってはいるが、上述の出版社の姿勢が気に入らないので評価を1ランク下げた。
4.0 大空の中の《密室》
フランスからイギリスへ飛ぶ旅客機で、一人の老婦人が変死した。

死体の首筋には、針のようなもので刺された痕があり、
足元には、黄蜂に似た羽のついた矢針が落ちていた。

針にはおそるべき毒ヘビの毒が塗られており、
少し離れた座席の下には吹矢筒が隠されていた。

毒矢の先を拾い上げたため、ポアロは検死審問で
陪審員たちに、犯人と名指しされるのだが……。



飛行中の機内で起きた密室状況下での殺人。

被害者はマダム・ジゼルという金貸しを兼ねて人の弱みを握り
恐喝する因業婆で、彼女の莫大な遺産が、犯人の動機です。


乗客の所持品から犯人を特定していく、ポアロの推理に注目してください。
3.0 中期傑作群の中の「失敗作」
本書はパリ・ロンドン間の航空機内の殺人を扱った作品で、「吹き矢」を凶器と思わせるカムフラージュには、そのあまりの「前時代性」に苦笑させられたものの、一読すると被害者マダム・ジゼルに誰が・どうやって近づいて殺したのかが最後までわからず、そのトリックと犯人の意外性から、これはクリスティーのベスト10級の傑作ではないかと思った。

しかし、よく読み返してみるとポアロの推理に致命的な欠陥があることに気がつく。
ポアロは機内の乗客たちのトランクの荷物のリストを見て、その中に犯行時に用いられたはずの“ある物”を持っている人物が犯人だと推理したが、その“ある物”を、犯人が誰にも見られずにトランクから持ち出し、またそれを誰にも見られずにトランクにしまう機会(あるいは、犯人が誰にも見られずにトランクを持ち出す機会)がまったくないのである。
このような推理の欠陥はクリスティー作品には珍しく、その分大きく減点せざるを得ない。ストーリーもヒロインのロマンス・ストーリーを絡ませて面白く仕上がっているだけに、実に惜しいことである。

なお、本書の前年、クロフツが『クロイドン発12時30分』で、本書と同様、飛行機内の殺人を扱っている。
民間航空機の歴史は第一次大戦後、1919年にロンドン・パリ間を毎日運行するようになって以来のものだが、『クロイドン〜』や本書で機内の殺人が描かれているのは、1930年代には航空機での旅が一般的に定着してきたことを示している点、本書には歴史資料としての価値を見出すことができる。

それと本書の表題は、原題“Death in the Clouds”の訳題で、創元推理文庫『大空の死』は米国版“Death in the air”の訳題、そして新潮文庫『マダム・ジゼル殺人事件』は作品の内容そのままの表題である。
違う表題だから別の作品だと思って読むと同じ作品だったりするので、注意が必要である。
3.0 犯行方法にはもう少し工夫が欲しかったですね
私が読んだ際の邦題は「大空の死」。現在の題に変えたのは、犯行方法が不明で「雲をつかむ」ような話の意か。若い男女2人が乗った飛行機で後部座席に座っていた老婦人が蜂の毒で殺されるという事件が起きる。飛行機という密室の中で起きた殺人事件である。偶々居合わせたポアロと男女2人が協力して事件解決にあたるが...。

捜査の過程はクリスティの作品らしく、それなりに楽しめるが、物語の進行上犯人はあの人しかいない(コナン風)。しかし、犯行方法には頭を捻った。最後に明かされる犯行方法は杜撰過ぎて成功する確率はほとんど無いであろう。この無茶な犯行方法を1頁足らずでサラッと説明してしまうのがクリスティのクリスティたる所以である。

トリックに拘泥せず、気楽な読書タイムを過ごすには好適な一作。
4.0 飛行機の殺人事件
 当時珍しい飛行機を犯行現場にした初期の作品であったと思います。
 そのため現代からすれば物足りなさがあります。
 もう少しトリックを複雑にしてもらいたかったと思います。
 1930年代と現代では技術や設備はかなり変わっているので仕方ないでしょう。
 しかし推理小説ではなく、ジェーンのロマンス小説として読むと
 トリックの「初期性」を無視でき、以外に楽しめました。

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