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現在に置き換えればDVの加害者と断罪されてもおかしくない母親が、旅先のペトラで殺されました。 捜査を開始するポアロは、関係者との会話を通して、彼らのつく複雑に絡み合ったウソを解いていきます。会話の中ではオリエント急行殺人事件でポアロが果たした役割にも言及されます。 現代の母親殺しにも通じるテーマを、そうくるかという落とし方で軽やかに収束させており、クリスティが長く広く愛されている所以をかいま見られます。エンディングにはクリスティのミステリーに共通して流れる安心感があり、リラックスしたいときの軽い読み物としては最適かと。 途中、母親の理不尽さや非道ぶりを詳細に書くクリスティですが、捜査にあたっては一転、ポアロにこう言わせます。 「被害者が神の善良な使途の一人であろうと、反対に、極悪非道な鬼であろうと、事実は事実です。わたしは決して人殺しを是認しませんよ」 わたしには、この一節が大変印象的でした。
子供の時でも、現在でも、親の干渉を煩いと感じたことは無いだろうか。 いつでも親というのは子供が何をするか知っていたいし、自分の望むように行動して欲しいと大なり小なりは思っているようだ。 しかし、この本に登場するボイントン夫人は、60代後半(この時代にはおばあさん)でありながら、結婚した息子・その嫁・娘二人・息子を自分の意に添うように行動させ、自分の家から外に出さない家庭内独裁者だった。 ポアロはある晩、宿泊先のホテルで「彼女を殺してしまわなくてはいけない」という不穏な言葉を耳にする。それを口にしたのはボイントン一家の次男だった……。 そして旅先で、ボイントン夫人は『心臓麻痺』を起こして死んだように見えるのだが……同行していた医師の注射器がなくなったことにより、ポアロはこれを殺人と見始めるのだが……。 最後に結末が2転3転し、思わず「え!?」と口に出してしまいました。犯人は意外なあの人。 それにしても、ボイントン一家のような成人した子供が親に管理され尽くしているというのは、ぞっとしないが、なんとなく見たことがあるようにも思える。時代の差を感じさせないテーマだった。