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謎のクィン氏 (クリスティー文庫)

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謎のクィン氏 (クリスティー文庫)の商品レビュー

5.0 ミステリアスかつ味わい深い短編集
メアリ・ウェストマコット名義で書かれた一連の「愛の小説」シリーズなど、
クリスティー作品には、推理小説以外にも、味わい深い作品が多いのですが、
まちがいなく、この作品もそうだと思います。
「道化師」の名前を持ち、どこからともなく現われ、どこからともなく去っていく
不思議な人物、ハーリ・クィン氏。
ただ、あえて彼の行動に法則を求めるとするなら、
彼の現れる所、男女の愛憎ありといった所でしょうか。


私は「クィン氏登場」・「窓ガラスに映る影」・「<鈴と道化服>亭奇聞」・「クルピエの真情」・「海から来た男」・「闇の声」・「死んだ道化役者」・「翼の折れた鳥」・「道化師の小径」が気に入っています。
大人の男女の機微を描いた「クルピエの真情」、ミステリアスな女性メイベルの醸し出す雰囲気が、
ストーリー全体に独特の印象を与えたまま、衝撃の真相へと展開していく、「翼の折れた鳥」、
静かな感動を呼ぶ「海から来た男」、
衝撃的かつ、深い余韻を残す「道化師の小径」が特に印象的でした。
5.0 不思議な物語
 ハーリ・クィン。いつも黒い服を着ているが、カラフルな衣裳を着て仮面をかぶっているように見える男。恋愛がからんだ事件が起きると現れ、示唆をして去っていく。
 彼の示唆を受けて実際に事件を解決するのがサタースウェイト。人間ドラマの観察者。芸術のパトロン。
 本格ミステリとはいえないと思うが、不思議な魅力を持った短編集。クリスティー、と聞いたらポアロやマープルを思い浮かべる人に読んで欲しい。
3.0 評価が分かれる作品かも
作品全体に謎めいた雰囲気が漂うという点では「ミステリー」なのでしょうが,ポワロやマープルのような探偵や推理小説的なものを期待して読むとちょっと(私のように)がっかりするかもしれません。むしろ同じクリスティー女史の「パーカーパイン」に近い,人生とか愛情とかを扱った(と一言で片付けたくはないのですが)短編集です。
4.0 怪奇・幻想色の濃い、不思議な魅力にあふれた逸品
 突然やって来たかと思うと、ふっといなくなってしまう不思議な人物ハーリ・クィンと、眼前で演じられる人間ドラマのよき観察者、60代の英国紳士サタースウェイトがコンビを組んで、事件の謎を解き明かしていく連作短篇集。話を覆っている幻想的な雰囲気が何とも言えず、独特の妙味がありました。
 「クィン氏登場」「窓ガラスに映る影」「<鈴と道化服>亭奇聞」「空のしるし」「クルピエの真情」「海から来た男」「闇の声」「ヘレンの顔」「死んだ道化役者(ハーリクイン)」「翼の折れた鳥」「世界の果て」「道化師の小径」の12篇が収められています。
 なかでも印象に残ったのは、「空のしるし」「海から来た男」「闇の声」の三篇。「空のしるし」は、あるシーンの風景が幻想的で忘れがたいものだったこと。「海から来た男」は、O・ヘンリ風のふたつの人生の交差に味わいがあったこと。「闇の声」は、ラスト三頁の真相がとても恐いものであったこと。それぞれに魅了されました。
 意表を衝かれたのは、ある作品の中で、「二〇二五年の現在から、過去をふりかえりましょう」と記されていたところ。てっきり、作者が執筆した1930年頃をイメージして読んでいたので、「えっ? これって未来の話だったのか!」となりまして。話の中の「いま」が、2025年と受け取れる訳文になっているのです。たぶん、私が誤読したのだろうと思うのですが。でも、そうした、時間とか生死を超越した味わいも、本作品には確かにあったような気がします。
 アガサ・クリスティの作品のなかでも、怪奇・幻想色の濃い、不思議な魅力にあふれた逸品。
5.0 語り部について。
クリスティ文庫版として04年に再販された作品であり、ハヤカワ・ミステリ文庫版とは違う方が翻訳したものです。今回の訳者は、翻訳家として充分なキャリアをお持ちのようで、この作品も簡潔で分かりやすい読後感を得ることが出来ます。

ですが、私としてはハヤカワ・ミステリ文庫版を推したいのです。
確かに同書は、些か文体が古びていて、回りくどいと認識されてしまう部分があるかもしれません。もし、これら二つの訳を『採点』するのであれば、多くの方がクリスティ文庫版に軍配をあげるだろうことは想像に難くないでしょう。
けれども、私は、四半世紀も昔に行われたこの仕事から、密やかな矜持と揺るぎない情熱を感じるのです。しかし、それを、明確な言葉によって説明することは非常に難しいとも感じています。
何故なら、ハヤカワ・ミステリ文庫版が纏っているものは、ロジックによって織られたものではなく、感性に属する原始的な感情たちの奇跡的な結びつきによって顕れたものであり、この作品の言葉を借りるのならば、「漠然とした魅惑の性質」を醸し出しているのです。そして、それはこの作品の主人公であるサタースウェイトとその主賓であるハーリ・クィンがもっとも愛したものでもあります。

この作品に興味を持った方は、そのうちの一篇で良いのです。両版を読み比べてみてはいかがでしょうか。そして、その時に生じるだろう、漠然とした感覚を心底で吟味し、その結果を以って、この作品との接し方とする。
そんな方法がこの作品に繋がり方に相応しいのではないか、この作品に魅せられたものの一人として、私はそんな言葉を残したいと思います。

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