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巨大企業が民主主義を滅ぼす

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巨大企業が民主主義を滅ぼすの解説

   イギリスのサンデータイムズ紙でベスト・ブック・オブ・ザ・イヤーとして取り上げられ、イギリスではすでにベストセラーとなっているノリーナ・ヘルツの『The Silent Takeover』は、グローバル化時代の企業がいかに私たちの生活、社会、そして未来を変え、そしていかに私たちが享受する民主主義の根底を揺るがすかを述べている。

   世界トップ100の経済組織のうち、現在51は民間企業が占め、国家はたった49となっている。ゼネラル・モーターズやフォードの売り上げはサハラ以南のアフリカのGDP(国内総生産)を上回り、ウォルマートの収益は東ヨーロッパの大半の国々の歳入よりも高い値をたたき出している。しかし、大企業の支配の拡大を認識している人はごく少数だ。新聞の一面には政府の動向が大きく取り上げられ、ビジネスニュースは新聞の中面へと追いやられている。企業よりも政府の方が私たちの生活に影響を与えるとでも言うのだろうか? 私たちが投票する政党には本当に政治的行動を選択する自由があるのだろうか?

   イギリスをはじめとするヨーロッパでは、すでに大きな論争が沸き起こっている。本書は、私たちの現在の生き方、そして誰が本当に私たちを統治しているのかについて、新鮮かつ衝撃的な見解を述べている。幅広く支持されている若き経済社会学者ノリーナ・ヘルツは、以下の点について明確かつ専門的な視点でとき暴く。まず、世界の企業がいかに合法または違法な手法によって政府を操作し圧力をかけているのか。そして、シアトルやジェノバでの抗議運動や遺伝子組み換え食品に対する不買運動が投票行為よりもどれだけ有効な政治的な武器となりつつあるか。さらに、学校へのテクノロジーの供給からコミュニティーのためヘルスケアまでのあらゆる分野で、どのようにして世界の企業が国の担う役割を取って代わろうとしているのか。

   概してメディアや消費者の圧力受けている企業の事業というものは、良いものから悪質なものまで多岐にわたる。しかし、抗議運動であろうと企業の権力であろうと、どちらにせよ多少なりとも民主主義的だと言える。であるとすれば、企業が音を立てずに世界そのものを支配しはじめる状況のなかで、民主主義はどのような運命をたどるのだろうか。

  『The Silent Takeover』は、持つ者と持たざる者に二分される世界(スラム街と高級住宅地、極貧の人々と大富豪など)を認識することを私たちに問いかける。この受け入れがたい局面のなかで、著者は政治を活性化し民主主義を再建するための新たな手段を述べている。(Book Description)

巨大企業が民主主義を滅ぼすの商品レビュー

4.0 資本主義を支える大企業の限界。
私は小さな政府を支持する立場であるので、著者が述べる政府による規制強化やら大きな政府を望む持論には反対だが、度を過ぎた資本主義国であるアメリカの現況をこの本で知る限りにおいては、著者の持論もこれからの日本の資本主義の在り方を考える上で大変参考になると思う。

日本の場合は官民一体、あるいは官主導による企業育成(行政指導という印籠や、あらゆる権利を国からいただくという御上様的意識)が主流であったように思われるので、巨大企業による搾取的社会構造という部分にはあまり目が行き届いてこなかったように思われる。
しかし終身雇用が崩壊し、企業の在り方が欧米のようなドライなものにならざるを得ない状況にある現在においては、もうこれまでのように黙坐してお上に従うだけでは資本主義を支える企業の犠牲者になるだけである。

そこで必要になるのが、著者が主張するように、行動を起こすということ、具体的には様々な形で抗議を行うこと、であるのだろう。
消費者として不買運動を呼びかける、一企業の株主となって倫理的に認められない経営者の政策や方針に反対する、メディアを有効利用して企業のイメージダウンを図る等など。
企業による乗っ取りとそれに伴う腐敗によって、政治家とその政府を信じられなくなり、投票する気も失せる現代においても、一般人が団結し行動を起こすことで歪んだ社会を変革することもできなくはないのだ。

注目すべき部分として、企業による社会的インフラの整備、教育や人権の普及、環境問題への取り組みなどの功績を具体例を上げて紹介している点などは、大企業を断罪することに終始したヒステリックな一般書とは違い評価に値する。

その上で企業によるそういった功績の限界と政府を代替することで起こりかねない重大な民主主義の危険を指摘している。
5.0 瀬戸際に立つ民主主義
現在、人々の政治に対する不信感は曾てない程まで強くなってきている。必然的に多額の資金を必要とする現行の選挙制度の下では、政治家は国民の声よりも巨大企業の意向に耳を傾けざるを得ない。その一方で巨大企業はグローバル化によって国家の枠組みを益々無視する様になり、利益を上げる為であれば人権や環境への配慮なぞ平気で踏みにじる。貧富の格差は拡大し、不平等感と絶望は広がる一方である。その暴走に唯一ブレーキをかけられるのは消費者である。ここ数年でグローバルな展開を見せつつある大規模な消費者運動(抗議行動)は、実際に幾つもの企業に対して自分達の主張を通すことに成功している。そこで企業の方ではイメージ戦略によるメリットを視野に入れ、労働条件等の改善をアピールするのみならず、教育や医療、はたまた外交にまで積極的に手を出す様になる。斯くして政府と企業との役割が入れ替わった、奇妙に転倒した構造が出来上がる。

原題は"Silent Takeover 無言の乗っ取り"。民主主義の原則が巨大企業主導の資本主義の論理によって浸蝕されていく様が、豊富な事例を基に解説されている。その上で著者は、消費者運動の恣意性や、公共の行政サービスを企業が肩代わりすることに対して警鐘を鳴らし、政治に今一度民主主義を貫く力を、人々に消費者としてではなく有権者として行動するようにと訴えている。改革に至るまでの道のりの描写はやや駆け足で具体性を欠くが方向性は間違ってはおらず(と私は思う)、論旨は一貫して明快、一読に値する警世の書である。

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