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ロング・グッドバイ

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ロング・グッドバイの商品レビュー

4.0 主人公の好みが左右する
洋書であるロング・グッドバイをここまで違和感を感じずに読むことができたことを感謝するとともに秀逸な翻訳本として評価したいです。
内容はハードボイルドな私立探偵を営む主人公フィリップ・マーロウが不可解な自殺の謎に迫ります。彼が行動で示唆する男気溢れる信念は齢30にして心の奥底に眠る男心を否応無しに擽ってきます。

春樹氏による「あとがき」でチャンドラー自身、「彼(フィリップ・マーロウ)は実在し得ない」と語られていますが、これがフィリップ・マーロウを言わずもがな語っているかと。本書の好みは主人公への思い入れが特に大きく左右しそうです。
4.0 読んでいるとムラカミさんオリジナルの文章みたいな気が
読んでいるとなんかこう、ムラカミさんオリジナルの文章みたいな気がしてくる。とくに持って回ったような比喩なんかは・・・。
ムラカミさん自身も書いてるけど、彼の文章はチャンドラーの文体の影響を受けているワケで、そのチャンドラーをムラカミさんが訳すんだから、そりゃムラカミさんの文章っぽくなるわな。

また、「グレート・ギャツビー」みたいな雰囲気も感じるんだよね。
で、「あとがき」には、「『ロング・グッドバイ』という作品は、ひょっとしてスコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』を下敷きにしているのではあるまいか」という説が披露されている。
ナルホドそれじゃ、雰囲気が重なるはずだ。ムラカミの文章なのか、フィッツジェラルドを翻訳した文章なのか、チャンドラーのそれなのか?エライ重層的ですな。

元祖「長いお別れ」が同じ早川書房(ハヤカワ文庫)から1976年に清水俊二訳で出ているが、こちらの方は、ムラカミ「あとがき」によると「細部を端折って」訳されている由。
僕は10年ほど前に読んでいるのだが、中身については忘れてしまっている。改めて本書と読み比べてみようと思っている。

ハードボイルドの「古典」。ヘミングウェイやムラカミの文体(似てるかな?)が好きな人にはオススメして良い1冊。
5.0 村上春樹の文才を認める。
村上作品は3冊ほど完読し自分の性に合わない事が分かっているから、たとえ女性ファンが多く何かにつけアドバンテージを得ると知りつつも無視を続けてきた。私はミステリファンではなく、ハードボイルドの支持者である。ハードボイルドとは自己規範を貫徹することの美学を描いた作品のこと。簡単に言って西洋人であれ日本人であれ、武士道に則っているかどうかが、ハードボイルド作品であるかどうかの私の基準である。
村上氏は相対主義的価値観を超えていない思想にある。その思想はモダニズムと言っても良い。ゆえに超現実的描写を良しとする。三島由紀夫がモダニズムを仏教的相対主義にアレンジして作品にした手法と同じである。
しかしながら、ハードボイルドの世界にはシュールな世界は存在しない。なぜなら、自己規範を貫くという事は、絶対性を表現することだからである。このことを村上氏はどうお考えなのか。絶対性に憧憬、あるいは希求、飢餓感でも持ちながらオリジナル作品において絶対性を表現せず、あるいは出来ずと言うのは。
旧訳の「ぼく」を「私」に変えるだけでもずいぶんとマーロウらしくなる。翻訳の仕事はお見事でした、村上さん。

余談ですが、チャンドラーもパーカーも武士道を知っているはず。民族文化に関係なくハードボイルドとは武士道哲学で極められた事は、論理的な帰結として証明できる。西洋の作家は武士道に勇気を得てハードボイルド作品を創作したに違いない(笑)。
4.0 村上春樹の小説の「タフさ」と「寂しさ」、ライフスタイルの源泉
 村上春樹の小説やライフスタイルが好きで、愛読しております。今回、レイモンド
チャンドラーの作品を翻訳したと知って、早速購入しました。途中から、「これは村
上春樹の小説では?」と思ったほど、村上氏が影響を受けた本だと感じました。

 村上小説に出てくる「僕」のタフな発言やコーヒーやカクテルのこだわりなどのラ
イフスタイルも、チャンドラーから受け継いだような気がしました。また、村上小説
の「鼠」のような影と寂しさを持ったキャラクターは、ロンググッドバイのテリー・
レノックスを思い出されます。

 訳者あとがきが最後についています。
一部、引用します。

チャンドラーは、
「作家を職業とするものにとって重要なのは、少なくとも一日四時間くらいは、書く
ことのほかには何もしないという時間を設定することです。別に書かなくてもいいの
です。もし書く気が起きなかったら、むりに書こうとする必要はありません。ただ何
かを読むとか、手紙を書くとか、雑誌を開くとか、小切手にサインするといたような
意図的なことをしてはなりません。(中略)ルールはふたつだけ、とても単純です。

(a)むりに書く必要はない。
(b)ほかのことをしてはいけない。」

 上記のチャンドラーの言葉に対して、村上氏も「彼のいわんとすることは僕にもよ
く理解できる。(中略)たとえ実際には一字も書かなかったとしても、書くという行
為にしっかりとみぞおちで結びついている必要があるのだ。それは職業人としての徳
義に深くかかわる問題なのだ。おそらく。」と答えています。

 確か村上氏の他の著作でも同じようなことが書かれていました。それは、作家とい
う職業に対する心構えのようなものであり、仕事の根幹、好きを仕事にする代償のよ
うな気がしました。

 私も自分の進む道がこれだと決めたのであれば、とりあえずその道を極めるための
「時間」を確保して、それに集中する努力を「継続」することが大切だと感じました。
5.0 読み始めたらやめられません。
村上氏はチケットぴあにエッセイを書いていたころから、チャンドラー氏の文体についてしばしばそのすばらしさを言及していましたね。私は英語が読めないので、原文のすばらしさを理解することはできませんが、とにかく、この本はとてもとてもおもしろいです。本をたくさん読み、文章を掘り下げて理解できる方も、娯楽に徹する姿勢で本を読む方も、ページを繰るのがもどかしいくらいに夢中になると思います。村上氏があとがきに書いたように、すべての文章が「きわめて正確に切り取られた光景であり、綿密に雄弁に語られてはいるものの、ほとんどプロセスを受けていない光景である」・・・私は、今日の昼から読み始めて、半分まで読みましたが、この小説の場面場面が実に鮮明に頭に浮かんできて、陳腐な言い方ですが、まるで映像を見ているようです。そしてストーリーもさることながら、なんと言うか、文章を読んでいるのが楽しいのです。こんなやめられない小説は久しぶり(多読派ではないもので・・・)です。村上氏の訳も大いに一役買っているのでしょう。しかし、主人公、村上氏の小説の登場人物に似ています。個人的感想ですけれど。

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