圧倒的に美しい文章
圧倒的に美しい文章。まるで音楽のようにそれは暗記すらしたくなる。
そして、自由自在に飛び回る発想。恋愛用マグロ、といった奇想天外な
概念を見事に調理してしまう、その手腕は見事というほかはない。
荒唐無稽なようでいて、その実完璧な予定調和による、微妙なバランスの
上に成り立っていることは最後の一文を見ても明らか。しかし、これが保守的な人間には全く理解されない世界であろう、という
のは容易に想像がつくのも事実。であるが、この文章を理解できる、という
だけで、自らを選民と称したくなる。
いずれにせよ、これを理解できない感性の持ち主は哀れというほかはない。
それはひとつの宇宙的な体験を損なうことだから。
ちょっと幻想性が強すぎて・・・。
笙野頼子氏の芥川賞受賞の表題作他2編を収録。マグロと恋に落ちる夢を見ていた私は、突然掛かってきた電話の主に説得され、片側は海、片側には工場しかない「海芝浦」の駅に向かうが……。
現実と幻の境界みたいなものを探っていく文体は、筆者の独創性を感じます。しかし、キーワードに応じて不断なく変化していく主人公の意識の流れみたいなものが、あまりに突飛で追いかけることができず、私は感情移入できませんでした。置いてきぼりをくらった気分になります。
所収の「シビレル夢ノ水」は、野良猫についていた蚤がだんだん変異を起こしていく、ちょっとグロテスクなお話。私は、表題作よりこちらのほうが楽しめました。