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猛スピードで母は

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猛スピードで母はの解説

   文學界新人賞受賞作「サイドカーに犬」と芥川賞受賞作「猛スピードで母は」がカップリングされた長嶋有の第1作品集。

 「サイドカーに犬」は、語り手の女性が小学4年生の夏休みに体験した、母親の家出に始まる父親の愛人との共同生活を回顧(懐古)する物語。ムギチョコや500円札、パックマンといったアイテムとともに描かれる1980年代初頭の時代風景が懐かしさをそそる。父の若い愛人である洋子さんの強烈な個性と存在感は、「猛スピードで母は」の母親の姿と相まって、自立的で自由な新しい女性のイメージを提示している。「サイドカーに犬」というタイトルには、大人と子どもの間の微妙な距離感がメタファー(暗喩)として込められている。大人と子どもの相互的なまなざしの交錯が、すぐれて文学的な「間」を演出している。

 「猛スピードで母は」は、北海道で暮らす小学5年生の慎と母親の1年あまりの生活を描いた作品。大人の内面にはいっさい立ち入らず、慎の視線に寄り添う三人称体による語りが、子ども独特の皮膚感覚や時間感覚をうまく描き出している。さまざまな問題に直面しながらも、クールに現実に立ち向かう母親の姿を間近で見ることで、自らも自立へと誘われていく慎の姿が感動的だ。先行する車列を愛車シビックで「猛スピード」で追い抜いていく母親の疾走感覚は、この作品のテーマに直結している。物語の結末で示される国道のシーンは、読者の心に強く残るだろう。(榎本正樹)

猛スピードで母はの商品レビュー

5.0 絶賛
装丁やタイトルの感じ、著者のキャラクターなどなどから、何となく好きになれないかも……と思っていたのだが、読んでみると、とてもすばらしかった。肩の力の抜けた(ような)文章がどこを取ってもいい。「サイドカー」も「猛スピード」も、語り手が本当に好感が持てる。好きになってしまった。「猛スピード」のほうが作品(構成?)として広がりがあるような感じはするが、「サイドカー」には洋子さんというすばらしいキャラクターが出てくるので、後者のほうが好きだな。どちらも、ただの小説(ためにする小説? 小説を書くために書いた小説というか……)という感じがしない。書くことによって世界をひねくりだしたんじゃなくて、この世界がさきにあってそれをすくいとった感じというか……。でもなんでこんな装丁にしたのかな。好きな人は好きなのか?
5.0 「家族」における優しさ、そして愛情
この本の中に収められている「サイドカーに犬」が映画化されるのを機会に、5年ぶりに改めて読み直してみました。

収められている2作品は、共に子どもの目から見た「家族」が捉えられています。どちらも裕福とは言えず、一般的に言って「幸福」という言葉からは、かけ離れた存在でしょう。
でも、この中で「サイドカーと犬」では洋子さんが、「猛スピードで母は」では母親が、「解放」的な子どもへの対処の仕方をします。がみがみと「規制」することなく、子どものしたいようにさせているように見えます。そんな二人の大人の女性が、子どもたちに見せる何気ない仕草や言葉の中の優しさや愛情が、読者に「家族」の素晴らしさを感じさせてくれます。

「家族」の問題が、ニュースになる機会の多い現代ですが、この作品を読むと、ほっとした気持ちになるのは何故でしょうか。ほんのちょっとした気遣い、思いやりで、問題は解決するのでしょう。
4.0 人間関係の距離感覚は親子関係が基礎
 この単行本に収められている2作品に共通するのは親子の関係の距離が非常に微妙であるということだ。「サイドカーに犬」では父親と息子の距離は程よい感じがするが、姉と父は決定的に距離感がおかしいと思う。これがこの主人公が社会に馴染まない感覚と同等であることは作者が意図していたとするとすごいと感じる。それ以上に母親との距離はあまりにもはっきりした間隔が開いている。これもこの主人公の荒涼として人間関係の冷たさを測るに足りるものであるように思う。そして洋子さんという中間的な存在が表れることで初めて主人公である姉に外の世界を導くのである。洋子さんだけが記号論的に名前を持っていることも興味深い。
 「猛スピードで母は」も慎と母親のべったりしてない距離感が不思議な物語世界の中心である。この作品が芥川賞を受賞しているが、私は「サイドカーに犬」の方が出来がいいように思う。この作品は終わり方が良くないように感じる。そこまで書いているのならそれらしい結末を用意して欲しかった。
5.0 「サイドカーに犬」のチカラ
表題作は芥川賞受賞作ですが、僕はこっちよりも併録されている
『サイドカーに犬』の方が好みです。著者の文学界新人賞を受賞
したデビュー作で、芥川賞候補にもなりました(この後に表題作
で受賞します)。竹内結子主演で映画化も決まっている『サイドカー
に犬』です。

まずタイトルが素晴らしい。「サイドカー『の』犬」ではなく、
「サイドカー『に』犬」なのが素晴らしい。微妙なニュアンス
の違いだけのように感じますが、そうではないのです。「の」
ではダメなんです。「に」だというだけで、どれだけ僕は心を
掴まれたか。
物語は単純で、母が家出をし、「わたし」と弟のもとに父の愛人
がやって来るというものです。「わたし」と愛人を中心にした一風
変わった日々が描かれます。愛人のキャラクターが抜群で、めちゃくちゃ
カッコイイ。正確は大雑把だけど、どこかしっかりとしていて太い「芯」
を持っている人。ラスト近くで描かれるこの人の「わたし」の父に
対する愛情は切ないです。このシーンでこの人の繊細なココロが見えてきて
胸を締め付けられます。

この『サイドカーに犬』の持つチカラは計り知れない。文句なしの傑作。
ふとした時に読み返し、そして胸を震わせています。
4.0 上手いですね
 わりとエンタメよりの作品だと思う。個人的には芥川賞の猛スピードで母はよりも、文学界新人賞のサイドカーに犬のほうがよかったと思う。
 サイドカーは出て行った母親、その隙間を生めるように現れた洋子さんという女性と過ごした短い子供時代を描く作品。そのキャラの個性、さらに、今までの踏襲されていたシステムの塗り替えのシーンなどは鮮やか。世代が違うのでよくわからない感覚もあるけれど、やはり作品的には秀逸。子供の視線も見事。オチもべたべたせずに、さらっと流していく技術も見事。
 猛スピードで母は。これも母親の話だが、どっちかというとサイドカーのキャラの個性に負けるような気がする。

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