うーむ。
同著者の「サーチエンジンシステムクラッシュ」が面白かったので、本作も手にしてみました。けれど……、という感じでした。
秋人という名の人物の不在。不在がゆえに、その存在感をより濃くする秋人。そんな彼の不在を遠くあるいは近くの原因として感情や生活を揺さぶられる町の人々。混沌を混沌のまま書くという手法は、「サーチエンジン~」に近い印象を受けます。
けれど、ひとりの主人公の視点で語られる「サーチエンジン~」とは違い、本作では町の多くの人々それぞれの視点から語られます。
そのために、ひとりの人間としての混沌の「度合い」が、「サーチエンジン~」に比べて薄くなっているように思えます。
多くの視点から断片的に語られる物語は、当然のように謎を謎のまま残し、カタルシスを与えてはくれません。「サーチエンジン~」でも違いはありませんでしたが、前作では一人に主人公を絞っていたため、混沌をより深く見せてくれることで、その混沌を「感じる」楽しさを得られたのですが、本作ではそのあたりに消化不良が残りました。
とはいえ、現在の先鋭的作者の立ち位置が「あまり面白くなかった」といった感想を言わせない場所にあり、おそらくは「人の話によると面白いらしいよ」なる感想が蔓延する予感アリです。それもまたひとつの「不在」なのですね。