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裁判員制度をテーマにした、おそらく本邦初の〈裁判員ミステリ〉。 三つの中篇から成る本書は、それぞれ別の事件を扱いながらも、 取り上げられる裁判の段階が、手続き順に配列されているので、 読了すれば、公判のおおよその流れが理解できる構成となっています。 ◆「審理」 弁護士・森江春策と若手の女性検事の証人喚問をめぐる法廷での対決。 ◆「評議」 審議後に行われる、裁判員たちの討議。 六番目の裁判員である「あなた」の視点から描かれます。 ◆「自白」 裁判の冒頭から、殺人の事実を「自白」する被告人と、 それを否定する弁護人という異様な図式のもとで、 審議が進められていきます。 前二篇が、オーソドックスな〈法廷もの〉といった 雰囲気であったのに対し、本作は、まさに本格テイスト。 二人称(「あなた」)という特異な叙述形式が採られた 理由も最後には明かされ、サプライズを演出します。 また、本件の被害者が、素人に甘言を弄して近づき、喰いものにする 出版ゴロであるというところには、著者一流の皮肉と風刺が。 昨今のラノベ≒「若さ」に偏重した風潮が戯画化した構図で示されており、 出版界の現状に対する著者の苛立ちと嘆きが窺われて興味深かったです。