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意味がなければスイングはない

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意味がなければスイングはないの商品レビュー

5.0 彼らが失い、そして得たもの
 先日、都会近郊の私鉄に乗ってとある瀟洒な小駅に降り立ち、偶然入った書店で見つけ、たまたま購入して読んだものが、表題のエッセイ集である。ジャンルとしては、私が日頃とくに愛好する村上春樹氏の手になる、いわゆる「音楽エッセイ」もので、クラシック、ジャズ、J・ポップスなど、幅広いジャンルにわたって鑑賞された、作曲家や演奏者の伝記やレコードに関する柔らかで奥深い論文集といってもよい。こと、音楽に関する限り、村上氏の筆から紡ぎ出されるイマージュのフォルムは、あくまで視覚的であり、ひとたび氏の手にかかると、いかなる音楽であれ、まるで一枚の精緻なミニアチュールのように、精密なタッチで描きあげられ、くっきりとした像が結ばれてしまう。そのような、彫心鏤骨ともいうべき氏の特異な才能の発露は、ここでも遺憾なく発揮されているように思われる。同書では、プーランク、シューベルト、ゼルキン、ルービンシュタイン、スガシカオなどの作曲家、演奏家が扱われているが、なかでも、テナー・サキソフォニスト−スタン・ゲッツを扱った部分は、氏のゲッツに対する並々ならぬ愛着と感情移入が籠められていて、同じくゲッツを愛好する私にとっては、はなはだ興味の尽きない面白さがあった。

 前置きが長くなってしまったが、この本を読んでいて感じたことは、音楽を聴くという行為は、一つの人生全体にかかわる全人格的な行為なのだということだ。むろん、人生を賭けずに作曲/演奏する大家はいよう筈がないが、そのような抜き差しならぬ態度でなされた作曲または演奏に向き合う私たちにも、そのような真摯な態度が要求される場合もあるのだ。そうでない音楽も多々あるし、音楽をそのようなものとして求道者的に捉える態度に抵抗感を覚える方々も多いことでもあろうが、私が今、心から耳を傾けて聴きたいと思う音楽は、やはりどこかで、作曲家や演奏家が、真剣に自分の人生に向き合う過程で生まれたもの、いわば「人生への洞察を含むもの」に限られているような気がする。敢えて言えば、ある種類の音楽には、その作品のスタイルや演奏される形式によって、どこか、「失われた人生」を取り戻す機能や役割が、きっと与えられているにちがいないのだ、と私は思う。村上氏が、音楽作品や演奏そのものを語るだけでなく、その作曲者や演奏者の生い立ち、また興味深いエピソードに自然と目が向いてしまう傾向をもつのも、おそらく、氏が私と同じようなスタンスで音楽に耳を傾けているからのような気がして、なんだか嬉しくなってしまうことが多かった。そして、美しい音楽を紡ぎ出す過程で、彼らがどれほどのものを失い、いかなるものを得たのか、それに関しても知りたいと思うのが人情ではあるが、それについて、この本では深くは立ち入っていない。少なくとも、音楽は私にとってもなくてはならないものであり、同じくそう感じる村上氏が、多くの資料とともに一本のペンをもって、興味の赴くままに対象に分け入り、それを克明に描き出していく過程は、音楽作品や演奏家の意外な側面を映し出していて鮮烈であり、また同時に、本書が音楽への一篇のオマージュたるを失っていないのは、まことに魅力的だ。
5.0 こんな評論を待っていました
まさにスイングするような文体で、内容以前にまず「ああ村上さんって本当にいい人なんだなあ。シニカルに見えたり残酷に見えることを小説で書いているけど、痛みを感じながら書いているんだなあ。なんてやさしい人なんだろう」と思いました。

とんでもなく魅力的な本作の中で、私は特にブルース・スプリングスティーンとシューベルトの項で落涙をおさるることができませんでした。

自分が思っていた違和感、世間の評価への疑問がこんなにも鮮やかに解読されていて、痛快至極でした。これを読んだだけでもう感謝感激です。

前に某音楽評論家がマドンナの新譜をけなすためにシャーデーのアルバムを見当違いに絶賛していて、「シャーデーはNO PAINなんだぜ!」って本人はカッコよく決めたつもりで、でも実際は「痛みを感じることもなく、弱者を切り捨てる人たち」を描写した歌詞をまったく理解していないことを露呈させていて、そいつはBorn in the USAも「若者の応援歌」みたいに絶賛していて、なんという単細胞。とあきれかえったものです。
何をもってして音楽評論家と名乗る資格の判断になるのか、本作ひとつだけでも村上氏はすばらしい評論家です。
ただ、「好きな表現者・好きな曲」を取り上げていますから、これで「嫌いな表現者・嫌いな曲」を書こうものなら死人がでるかもしれないですね(怖っ!)

何度も繰り返し読み直して、心地よいスイングに酔いました。

面白かったです、ほんとに!
4.0 音楽への愛に満ちている
真の批評は創造的でなければならない。本書はそのよきお手本だ。

ぼくなどは「こういうのは聴かなくてもいいな」と、はなっから放棄してしまうようなものでも、著者は愛情をもって接する。そこが偉い。ウィントン・マルサリスへの厳しい批評も、そこに深い愛情が読み取れ、説得力がある(ウィントン自身にぜひ目を通してもらいたいが)。

クラシックやジャズの音楽評論家も学ぶべきことが少なくないはずだ(こっそりと、読んで勉強してほしい)。
4.0 趣味は読書と音楽鑑賞
村上春樹は本業の小説の中にも音楽を効果的によく散りばめている。読んで影響された人も多いと思う(自分もその一人で、ジャズをちゃんと聞き始めたのは村上さんによる)。そんな村上春樹がクラシックからJ-POPまで音楽への愛情をこめて書き上げた作品。
もちろんただ曲が良いとか演奏がうまいとかのディスクガイドに終わらず、音楽を奏でる「人」を村上さんにしか書けない文章で描き、音楽への誠実さが伝わってきます。
音楽と読書が(平凡だけど)趣味で良かった、幸せだと感じれる作品だと思います。
5.0 村上春樹の音楽紹介は最高です。
色々なアーティストを村上春樹の好みで紹介していて楽しめました。知らないアーティストも多かったけど・・・。
スガシカオが取り上げられているのが、スガシカオの音楽が好きなので興味深く読みました。スガシカオの詞は、たしかにすごいなと思います。
日本の音楽って、結局、リズムをいれてごまかしているけど歌謡曲だという著者の記述がありましたが、村上龍もおんなじ意見を、キューバ音楽と日本の音楽の対比で書いていました。
日本の音楽が折衷音楽で、それを受け付けないっていうのは、そのような世代があるということなのだろうか?
そんなことも思いました。

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