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クオリア降臨

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クオリア降臨の商品レビュー

4.0 理系と文系をつなぎ、解決する補助線を探して
 TVやせいぜい雑誌程度でしか知らなかったので、著者は極めて理系的な人なのだと思っていた。しかし、実際には外部から計り得ない感情や思考をいかに捉えるかということを研究しているようで、理系的なデジタルな手法を駆使して究極的なアナログの文系研究している人だと知った。そして本書では人間の思考の発露として文学作品が俎上に挙げられている。
 「感動する」と言うことはどういう現象であるのかということについて、著者の「想い」というものが綿々と綴られていて、モノローグを延々と聞かされているような不思議な読後感のある本だ。著者も自分の考えを整理しながら書いていたのではないだろうか、後半はいろいろな話題が取りあげられる。インターネット社会に対する憂いは一般的だが、自分の生き方に対する捉え方は新鮮。現在の学会のあり方にも疑問を投げかけるあたりは痛快だ。
 最後の結びで、科学と文学の関係を幾何学になぞらえて、解決するための補助線を探したいという結びはお見事。
5.0 無限に浮遊する感覚の文学論
私たちが何かに向かい合ったり感じたときに生まれる大いなる印象や質感。その「クオリア」という脳内現象を以って試みられた文学論。

脳生理学や認知行動学の立場から文学を論じているという点で、まずこの本はユニークであるけれど、面白いのは、多くの文学作品を媒介にしながら、普遍的な美について、世界について、人間について論じていることだと思う。世界の深遠を見下ろし、そこに降りていくような感覚。

「近代科学が前提にしてきた数や方程式による記述を拒否する、それらのユニークなクオリアこそが、私たちの体験のメルクマール(刻印)となる。」
「生きものたる人間が掴むことのできる世界は、日常の猥雑な小世界の中に垣間見える可能無限である。」

中原中也の詩を思い出す。

 風が立ち、浪が騒ぎ、
 無限のまへに腕を振る。

もともと、文学にしても、科学にしても、数学、哲学、宗教にしても、普遍的な美、永遠を希求して行われる人間の営みなのだろうと思う。ヨーロッパを旅行したとき、宗教画や建築物がどれも高みや光を偏執的にまで追求しているのを見て、なるほどなと思ったけれど、古今東西、人間が求めてきたことはそこにあるのだろう。

文学や絵画、建築を見てクオリアを感じることもあれば、日常の中で空の色や花の美しさに陶然とすることもある。そればかりか、茹で上がった野菜の色の美しさや食器の色合いなど、クオリアは確かに生活の細部にまで満ちていて、プラトンの言うイデアのように、美は遍在し、個々の存在たる自分たちがどうそれを認知し享受していくかであろうと思う。
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1.0 文学青年だったのでしょう
 まっとうに文学研究をやっている人に余りにも失礼だと感じる。
 文学研究は「クオリアのピュアさにおいて作品自体には絶対に負ける」といわれても、そもそもそんな勝負は誰もしていない。それは「実況アナウンサーはプロボクサーよりボクシングが弱いからダメ」というような見当違いである。それに彼が標榜する印象批評であれ、作品自体の生じせしめるものと同一のクオリアは生み出せまい。その点で他の文学研究と同断である。もっというならば、文学作品には、現実の体験のクオリアの代理は出来ない。勿論逆もまた真なりで、読書によってしか得られないそれもあるだろう。
 クオリアについて考える事の重要性を否定はしないが、茂木氏の戦略はクオリアをなにか魔法の呪文のように使い、その意味をいたずらにインフレーションさせているだけではないだろうか。

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