身内による身内のための警告の書
本書は、元新聞記者による新聞批判の本である。読者の新聞離れが進み、販売部数が総じて頭打ちとなる中で、自己改革を怠り、安易な広告収入増に頼ろうとする新聞各社の経営方針に警鐘を鳴らしている。新聞が危機的状況にあるという本書の主張には全く同感するのだが、具体的な問題点として取り上げられている事例はどれも少しピント外れである。例えば、一部の新聞社が有価証券報告書の提出義務を免れていること、広告が紙面の50%を超えているのに第3種郵便物の認可を受けていることなどは、単に法律違反の恐れがあると言っているだけで、それ自体が大きな問題だとは思えない。むしろ、広告量が増えると政治的中立性が失われ問題であるとか、その一方で価格を安く抑えることができ読者には有益だとか、得失をまず論じるべきであり、単に法律違反かどうかを問題にするのは意味がない。例えばアメリカのローカル紙では、スーパーの特売の宣伝のようなものまで紙面に載っているので、広告量はものすごく多いが、それによって政治的中立性が損なわれているとは思わない。 その他、記者クラブ制度、再販価格維持制度、販売店の強引な勧誘など、昔から言われてきた問題点も一通り触れられているが、すでに言われてきたことの繰り返しが多く、元記者ならではの内部告発があるわけでもない。また、偏向した報道、記者の取材能力のなさ、誤報の多さ、事件報道のあり方、各社の横並び体質など、もっと重大な問題には何も触れられていない。さらに、地方紙の淘汰や全国紙の他メディアとの連携など、今後生じるであろう変化への展望もない。アメリカの新聞の課題を論じた第1章と第2章は面白かったが、単なる紹介に終わっているし、新聞各社のウェブサイトを紹介する第3章に至っては、本書のテーマと何の関係があるのか理解できない。
総じて本書は、さまざまな問題を抱える新聞社を、新聞記者OBが叱咤する、身内による身内のための警告の書であり、我々一般の読者へ向けたメッセージだとは思えない。元新聞記者の危機意識がどのようなものかを理解するには格好の本だが、その意識の甘さに落胆する本でもある。今後もっと厳しい内部批判が行われることに期待したい。