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日本の童貞 (文春新書)

日本の童貞 (文春新書)

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日本の童貞 (文春新書)の商品レビュー

4.0 恋愛の自由市場の成立の中で
 本書は1972年生まれの女性教育社会学研究者が、修士論文をもとに2003年に刊行した本であり、戦前・戦後日本の雑誌記事の言説分析を通じて、童貞(本書の定義については「はじめに」を、語義の変遷については第4章を参照)の男性に好奇の視線を向ける社会の在り方を問おうとした本である。前近代日本では男性の童貞は重視されなかったが、花柳病予防および貞操の男女平等という観点から、童貞を美徳とする考え方が、19世紀末〜1920年代に主に知識層の間で浸透した(平塚らいてうらの花柳病男子拒婚同盟等の案は、彼らの間からも感情的な猛反発を受けたが)。しかし、1960年代半ば以降、雑誌メディアの隆盛の中で、処女の減少と童貞の増加が問題化されると、70年代以降、未経験男性が童貞を恥じる感覚を吐露するようになり、民俗社会の崩壊、恋愛の自由市場の成立とも関連して、80年代には素人童貞という下位範疇、やらはたのような童貞喪失年齢の規範化、童貞を身体的・精神的に病理化する言説、童貞は見て分かるという可視化言説が登場し(これらはどれも根拠薄弱)、童貞言説は爛熟期を迎えた。90年代には一部で童貞復権の動きが見えるものの、80年代的価値観の崩壊までには至っていない。著者は、この「童貞差別社会」の本質として、性を私的領域に配置することにより特権化する一方で、建前とは裏腹に公領域による干渉の下に置く近代の問題性を見、性の相対化、非童貞の相対化、女性の値踏みへの順応といった多様な対応を例示する。テーマゆえに露骨な表現が多いが、多くの言説(巻末に一覧表あり)を丹念に分析し、数量化・類型化した研究であり、全てが自己責任化される自由化した社会の生きづらさを示す本と言える。意外な人物の意外な発言も分かる。
                         
4.0 童貞論というより童貞メディア論
この本は筆者が「はじめに」で書いているとおり、「童貞に興味がある人」ではなく
「童貞に興味がある社会」に興味がある人向けの本である。故に童貞そのものをあつ
かっているというよりも、各時代の童貞言説をあつかっている。童貞史というよりも
いうならば童貞メディア史というべきだろう。
雑誌メディアだけに、その社会全体がそのような風潮だったかは疑問である。例えば、
戦前の「童貞がかっこよかった」言説も、時代の主流であったかは謎である。本書で
あつかわれているアンケートにしても、対象となっている人間は東大や京大など、や
たらと学歴が高く、特権階級の人間であるといっていい。前近代まで日本男子は精通
すると因習として性交し、童貞という概念そのものがなかった。その中で精通しても
女性と性交しないとうい童貞は近代的概念であり、童貞を保持することが社会全体で
称揚されていたのだろうか。男、とりわけ市井の童貞にとっては、童貞であることは
やはり屈辱以外何者でもなかったのではないだろうか。
ところで、筆者があつかっている記事が、戦前は学者、作家など、割と学術的なもの
であったのに対して、戦後は週刊誌などの割と大衆に向けて書かれた記事にシフトし
ていくというのも興味深い。そして、戦後の砕けた文体に童貞言説が移されるにつれ
てきわめて露骨な「童貞フォビア」が表れくる。
70年代、80年代は特に酷くて、童貞はマザコンで、包茎で、インポである(っ!!普
通、インポかどうかはセックスして見ないとわからんだろと思うのだが)。「童貞は
早く捨てるべき」というメッセージを雑誌メディアは、知識人に語らせ、専門家の解
説を「曲解」することで生成していった。
童貞メディア論に対して、次数を一つ繰り上げた問いを立ててみると、それは「何
ゆえにメディア(この新書も含めて)は男を性化(童貞喪失)させたがるのか」とい
うフーコーの「性の歴史」の問いのようになってくる。
4.0 分析力はみごと
 この本では、前半では戦前の童貞言説。後半は戦後の童貞言説を挙げている。戦前と戦後での童貞言説の見事なコントラストを丁寧に描き出した著者には脱帽する。それは大衆化であり、結婚と性と恋愛の分離であり、男女の地位の変化であり、様々な要因を綺麗に描いている。

 そして最後に、著者は童貞を恥と思わないための条件を3つほど挙げているが、これも面白い。社会学的な視点と、本人の視点。
後者の視点のほうは、挑発的な意見であり、それまでの議論を台無しにしてしまう可能性もある。しかしそこの捉えようは個人の問題である。

問題があるとすれば、作者の研究の動機がイマイチ理解しえない点で、星四つ。

4.0 文章能力や分析能力はみごと
1・2章で花柳病に感染しないためにも童貞でいようという1920年代の学生や学者の言説をあげ、3章では平塚らいてうが、ならば花柳病の男性には結婚を制限する法律を作ろうと述べた時、相当な非難を受けた話をあげる。
1920年代の男女関係は、まさに男性が断然優位の社会になっていた。

4章では「童貞」の意味合いが時代とともに変化してきたという中休み。

5章からは戦後の話で、「恋愛・結婚・性」の三位一体が徐々に崩れ、戦前とは異なり男性にとっては、性は獲得しなければならないものへと変化し、その中で「童貞」は恥へと変わる。
そして1960年代半ば以降、大衆雑誌の刊行に伴い、その思いは広まり、その恥の言説を唱えたのは、戦前と異なり女性であった。

ここに、戦前と戦後の綺麗な線引きがなされており、このような対称さをみごとに描き出した著者には脱帽する。

そして最後の箇所で「童貞」を恥と思わないようにするにはどうするべきか?という問いを立て、著者はその解決法を4点挙げるが、最後の一つが「男性も童貞を捨てる努力をし、捨てるべきだ」といったような発言をしている。

この発言は、まさに第3章の平塚らいてうの発言と類似しており、タテマエ男女平等社会に住む男性にとっては、イタイ一言かもしれない。

しかし、彼女の挑発的な研究が、真の男女平等社会に近づけるのではないか?と少し期待を感じさせる。

どこの引用か、一瞬わかりにくいので星4つ。

2.0 切り口は斬新、分析と結論は陳腐
「童貞が格好わるいものでなく、価値あるとされる時代もあった」
という切り口は面白いと思う。でも、じゃあ、何で、今はイケてな
いイメージになっちゃったんだろう? という素朴な疑問に対する
答えは、この本にはない。

調査方法は雑誌を集めた図書館で「童貞」でキーワード検索して
出てくる記事をざっと見て、論調の変化をなぞるだけ。学部生の
卒論としては面白いかもしれないけれど、わざわざ本にするほどの
内容ではない。雑誌の短い記事で充分。

何よりいただけないのは、著者にもてない男=童貞への差別的な
物言いがちらほら見えること。こんなテーマを選んでるから、
男性の辛さ(もてないとか、やれないとか)に理解あるのかな?
と思ったらそんなことない。

何だか、ためにする議論を聞かされてるようで白けました。

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