分析力はみごと
この本では、前半では戦前の童貞言説。後半は戦後の童貞言説を挙げている。戦前と戦後での童貞言説の見事なコントラストを丁寧に描き出した著者には脱帽する。それは大衆化であり、結婚と性と恋愛の分離であり、男女の地位の変化であり、様々な要因を綺麗に描いている。 そして最後に、著者は童貞を恥と思わないための条件を3つほど挙げているが、これも面白い。社会学的な視点と、本人の視点。
後者の視点のほうは、挑発的な意見であり、それまでの議論を台無しにしてしまう可能性もある。しかしそこの捉えようは個人の問題である。
問題があるとすれば、作者の研究の動機がイマイチ理解しえない点で、星四つ。
文章能力や分析能力はみごと
1・2章で花柳病に感染しないためにも童貞でいようという1920年代の学生や学者の言説をあげ、3章では平塚らいてうが、ならば花柳病の男性には結婚を制限する法律を作ろうと述べた時、相当な非難を受けた話をあげる。
1920年代の男女関係は、まさに男性が断然優位の社会になっていた。4章では「童貞」の意味合いが時代とともに変化してきたという中休み。
5章からは戦後の話で、「恋愛・結婚・性」の三位一体が徐々に崩れ、戦前とは異なり男性にとっては、性は獲得しなければならないものへと変化し、その中で「童貞」は恥へと変わる。
そして1960年代半ば以降、大衆雑誌の刊行に伴い、その思いは広まり、その恥の言説を唱えたのは、戦前と異なり女性であった。
ここに、戦前と戦後の綺麗な線引きがなされており、このような対称さをみごとに描き出した著者には脱帽する。
そして最後の箇所で「童貞」を恥と思わないようにするにはどうするべきか?という問いを立て、著者はその解決法を4点挙げるが、最後の一つが「男性も童貞を捨てる努力をし、捨てるべきだ」といったような発言をしている。
この発言は、まさに第3章の平塚らいてうの発言と類似しており、タテマエ男女平等社会に住む男性にとっては、イタイ一言かもしれない。
しかし、彼女の挑発的な研究が、真の男女平等社会に近づけるのではないか?と少し期待を感じさせる。
どこの引用か、一瞬わかりにくいので星4つ。
切り口は斬新、分析と結論は陳腐
「童貞が格好わるいものでなく、価値あるとされる時代もあった」
という切り口は面白いと思う。でも、じゃあ、何で、今はイケてな
いイメージになっちゃったんだろう? という素朴な疑問に対する
答えは、この本にはない。調査方法は雑誌を集めた図書館で「童貞」でキーワード検索して
出てくる記事をざっと見て、論調の変化をなぞるだけ。学部生の
卒論としては面白いかもしれないけれど、わざわざ本にするほどの
内容ではない。雑誌の短い記事で充分。
何よりいただけないのは、著者にもてない男=童貞への差別的な
物言いがちらほら見えること。こんなテーマを選んでるから、
男性の辛さ(もてないとか、やれないとか)に理解あるのかな?
と思ったらそんなことない。
何だか、ためにする議論を聞かされてるようで白けました。