健全なナショナリズムよ
著者はベトナム戦争最中に現地に赴き、ベトナム人の政治の動乱と国家の行く末に対する無関心は、彼の国を必ずや共産化させるだろうと予見した。
そしてベトナムの地で抱いた懸念が、この国と無関係ではないであろう定見のもと、国家なる幻影を追い求め国政へと船出する。それから著者が、この国を「さながら宦官のように成り果てた」と警鐘を鳴らして国政を去る迄の25年間に遭遇した内政・外交の興味深い内幕を回想してゆく。
終章に至り、「ふり向いてくれ、愛しきものよ」と著者の未だ醒めぬ想いを綴って筆を置く。
そして私もこの結末のないドラマの読後に、彼の「天命」に就いて思うのだ。
危機感を感ずるリアル・ホラー
文士 石原慎太郎はベトナムでみた危機的状況下での知識階級そして国民の「無関心」をみ、我が国に同様の危機を感じ「政治家」となった。その石原氏が実際に政治に飛び込み格闘した「政治」の本質、人間、そして数々の事件を25年間の国会議員としての活動を通して記した「記録」。我々が断片的にしか知り得なかった数々の事件や事象、そして自らが当事者として当たった案件、政治家生活で知り合いすれ違った多くの知己につき、克明に記されており、読者の興味は尽きない。数々の事件やその真相をイベントとしてではなく、一貫した連続としてものをみる石原氏のセンスはまさに白眉である。また全ての事案に対し、その反対勢力たるものについても、綿密なる調査を行い問題の本当の解決策を探ろうとする探!!求心と行動力は驚異的でもある。他方で下巻になるが、親友アキノ氏、盟友中川一郎氏との関係する部分は一編の良質なドラマを観るがごとき読み応えをみせている。
石原氏の国会議員を志した際の危機感が、本書が上梓された時点でも解決をみず、更に今日に至っても何ら改善されていない現況をみるにつけ、本書は読者に極めてリアリティを持った恐怖感をも憶えさせるであろう。