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海音寺潮五郎は、昔から好きな作家の一人である。西郷南州の人物に多少は近寄れたのも彼のおかげであったし(とはいえってもやはり相当の隔たりがあるのだが)、司馬遼太郎や山路愛山も手軽に読める物がなくなれば、やはり海音寺潮五郎に帰るほかないのである。 武将列伝もかなり昔に一度読んでいると思うが、手元に残っていないので、この新装版を買ってあらためて読んでみた。 源平編で扱われているのは、源氏から義平、頼朝、義仲、義経の4人と、平清盛、楠木正成の合計6人。義平の武者振り、清盛の出世、頼朝の不幸と異常、義仲の意地、義経の天才、正成の清白さがよく描かれている。 今回最も印象に残ったのは正成である。海音寺は、正成の清白さには、生来の性質だけでなく学問による修養と信念があったはずだとし、宋学の大義名分論に言及している。そして、正成は時勢を知りながらも節義のために死んだとし、「倫理というものは、往々にして時勢の流れと逆行することがあるが、それでも長い目で見れば、人生に寄与していることが少なくない」と述べている。正成がいたからこそ、幕末もあり得たのだろう。 読むに価する史伝人物伝であると思う。