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上・下巻。 十代家治から十一代家斉への、将軍継承をめぐる裏の争いが描かれている。 主人公は御家人くずれの鶴見源次郎。 これに関わるのが、田沼意次・松平武元の両老中、 田安(松平定信)・一橋(治済)の両卿家、それに暗躍する八嶽党と公儀隠密。 結句、読み進んで行くとどれとどれが結び付いているのかよく解らないという物語である。 共闘していた者が敵になり、敵と思っていた者が味方となり、 主人公が置かれる立場と物語の展開の中で、関わる相手のスタンスも入れ替わる。 結果は知っていても、それを藤沢節で、しかもフィクションで描かれるとたまらない。 またこの作品の魅力は、対面にある2者がいくつも存在する点にもある。 剣の達人である主人公・源次郎と、文科系の悪友・細田民之丞、 主人公の亡妻の妹・津留と、八嶽党のお芳、 松平定信配下の剣客・白井半兵衛と、八嶽党に籍を置く伊能甚内と八木典膳、 主人公の大師匠・興津新五左衛門と、伊能の師匠で元八嶽党の赤石道玄、 そして田沼と松平、田安と一橋、八嶽党と公儀隠密・・・・ 八嶽党と公儀隠密の構成員までが手抜きなく描かれていて、 とにかく穴がなく、面白い。