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「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))

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「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))の商品レビュー

5.0 日本と「空気」
この本は日本の根本原理、伝統的発想法を分析した本です。内容を簡単に説明すると。

【一】日本人は物事を相対化することが苦手であり、絶対化しやすい。絶対化すると絶対化したものに支配される。(物神崇拝、アニミズム)
【二】日本人は状況論理、状況倫理主義である。どんな時も悪いことは悪い、ではなく、時と場合、その時の状況によっては、悪いことも許されると考える傾向がある。(この傾向は必然的に日本的平等主義に行き着く)
【三】日本人は集団主義、家族主義である。日本人は集団に依存する傾向が強い。そのために身内を庇う傾向があり、身内に甘い。身内にだけ通用する常識を持つことがある。

この三つが重なり、集団(時には日本全体)が「空気に支配」される(劇場化する)、という分析です。この本を読めば日本の根本原理、伝統的発想法は戦前も戦後も、全く変わってないということがよく分かり興味深いと思います。
5.0 裁判員になった人は皆読むべき
山本七平の日本論としては『日本人とユダヤ人』が有名だが、評価が高いこちらの方を読んでみた。
日本社会が「空気」に支配されることを指摘しており、日本人の特徴を最もよく把握した名著。
著書が述べるように「その場の空気によって・・・」「そういう空気ではない」など、日本人は見えない「空気」に抵抗できなくなる(一神教の正義のような宗教的絶対性を持っている)。
例えば、マスコミ等で一方を善、他方を悪と報道すれば、社会は一様に空気に支配され、皆同じ方向に向いてしまう。日本ではこうした事例にことかかない。

少なくとも裁判員になった人は「空気」に支配されることを知っておかなければならないだろう。
でないと検事、弁護士、世論などがつくる「空気」に支配され、判断を過誤することになる。
なぜマスコミがこの事実を取り上げないのか、不思議なくらいである。
4.0 遅れてしまった出会い
イダヤ・ベンダサンの『日本人とユダヤ人』(山本書店)は、1970年の大ベストセラーだった。しかし、わたしは読んでない。手にも取らなかった。なぜなら、私は「反ベストセラー主義者」だからだ。

 ベンダサンはユダヤ人で、ユダヤ人の立場から日本人を論じた本がこれだった。ところが、何年かしてベンダサンは実在の人物ではないらしい、どうもこの書を訳した「山本七平こそがベンダサンではないのか」、「偽ユダヤ人だ」という噂が広がり、雑誌などでも書かれたりした。今日では、ベンダサン=山本七平は、広く知られている。

 ベンダサン名義の『日本人とユダヤ人』も、その他の山本七平の本も、「どうせつまらない、価値のないことしか書いてない本だ」と、私は小馬鹿にしていた。しかし、ごく最近になって、私はこの認識を改める必要があるかもしれないと思い始めている。

 その理由は、ひとつには、尊敬する宗教社会学のS先生が、「山本七平はなかなかのものだ」とおっしゃったからだ。これはキリスト教やユダヤ教、そしてイスラム教についての知識についてのことである。
 それからもう一つは、山本七平が日本人と日本文化の独特の、それもその負の部分を鋭く批判し、分析していることに気付いたからだ。たとえば、ずばり「空気」である。人びとを動かし、支配する、眼に見えない力。それが「空気」である。日本の家族、村、会社、組合、そして国家……それらを左右し、規定するものが「空気」だ。そしてこの「空気」には誰も逆らうことができない。

 昭和16年の日本。権力の中枢部において、対米戦争に批判的なひと、反対の人、躊躇する人は、少なくなかった。いや、多かった。しかし、戦争へと向かう「空気」に誰もが逆らえない様な状態になってきた。昭和天皇も、木戸内大臣も、山本五十六提督も反対だった。しかし、説明しようのない「空気」が、宮中、政府、陸軍、海軍を支配していた。

 山本七平の本に『「空気」の研究』(文春文庫)がある。 この本が、かかる「空気」について正面から取り組んだ書である。難しくはないのだが、しかし、なんかややこしいところがある本だ。 『「あたりまえ」の研究』(文春文庫)という本もある。 『日本人とユダヤ人』をふくめて、山本七平の本をていねいに読む必要があると最近では思っている。
 まあ、1970年の段階で山本七平を読んでおれば、こんな遠回りをしなくてすんだのだが、「反ベストセラー主義」のせいでちょっと損をしたなと思っている。

 わたしは「空気」は日本人の間だけにあるのではないと思う。グラムシの「コンフォーミズム」、ヴェーバーの「諒解」の概念にも関係すると思う。この点を勉強したい。
5.0 「空気」読め!
この本に出会えたことは嬉しい。日本人として、社会人として。

「空気」はどこにでもあり、いつでも作られ、その呪いを解くことは難しい。
この状況じゃ仕方がない、そんなこと言ってもしょうがない、
そういう言葉は蔓延していて、それと戦うことなど「無駄」に等しい、
自分もある年齢からそう思っていました。
なによりも、自分の心の中に「空気」が生まれ、それに支配されていることに気がつかせてくれた本です。

この本には、空気を打破する具体的対策は提示されていません。
それでも、著者はそれを「信念」であると結論づけています。

考えながら、戦いながら書いているようにも思えます。だから、著者が使う言葉は難解です。
5.0 日本人を呪縛する最高法規「空気」に科学的・論理的光を当てる良作
他の山本七平氏の著作同様、読んでいて日本人の一員である自分自身を覆う壁を一枚一枚、冷撤な論理によって剥がされつつ、反論の余地なくその正体を暴かれていくような複雑な気持ちになった。


日本人論の大家と言われる氏の著作からは、常に何らかの貴重な知恵を与えられる。
読んで得こそあれ損はないだろう。
特に日本の各界のトップや経営者、中間管理職にとって自分自身の思考・行動を決定さす正体不明の呪縛(正体がわからない規範だからこそ、まさに「空気」支配は「呪縛」と言いうるであろう)、その妖怪の存在とその輪郭を把握さえできれば、将来の危機的状況から自分自身の所属する集団を救うことができるかもしれない。

また、日本の企業・学校その他の組織に加わる外国人の方々にとっても、日本で暮らし、働く上で思いがけない災厄を避けるため非常に有益な示唆を与えてくれるだろう。

日本では、一旦「空気」という言葉が意思決定の根拠に使われれば、たとえそれがいかに合理的根拠に欠けたものであると感じても、それに唯唯諾諾と従わなければ著者のいうように「抗空気罪」という不文律の極刑に処され、下手をすれば組織の中で抹殺・軽くて村八分にされる危険があるという事実を、よくも悪くも知っておいて損はない。日本企業による外国人の入社研修プログラムなどにそのことを組み込むべき様に思える。

そうでなければその従業員が可哀そうだ。


逆に、日本で幼年期〜青年期を暮らした日本人にとっても欧米等の企業・組織に加わる前に読んでおいても損はないと思う。
なぜなら、今まで日本の風土の中で断片的に叩きこまれ、その規範に束縛されていることすら意識できない程に身に染まっている「空気」支配の価値観を外国に持ち込めば、「簡単に“ムード”(空気)に流される使えない奴」というスティグマを押されて場合によっては職を失うか思いがけない冷遇を受けるかもしれない。

それを回避するための多くの示唆を本書が与えてくれると思われるからだ。


本書は、日本人独特の「空気支配」(ただ、多くの日本人はそれがあたかも「人類普遍の原理」のように錯覚しているように思える)というタブーに初めて科学的・論理的分析の光を当てた傑作であると思う。

著者はその支配からの具体的な脱却方法までは示してくれず(示唆はあたえてくれている)、じゃあ日々の現場で対応している小生含めた庶民がどのようすればよいのか、というう課題は残る。しかし、脱却の前に呪縛の正体を自覚ことがまずは先決であろう。


本書が発表されたのが戦後30年、そして更にそこから30年を経た今、氏が指摘する空気支配は弱まったのか、強まったのか?KYなどという言葉に代表されるように寧ろ強まっているのではないか。
「空気支配」発動の要件の一つとして著者が上げる“物体への臨在的把握”等がなくても、空気支配は簡単な善玉・悪玉よりわけの論法だけで日本人から相対的思考を奪い、絶対的空気支配を発動させ得るようになっているように思える(著者が30年前に底が浅いだけに危険性が低いと語った人為的醸成による空気でも、容易に強固な空気支配が完成しうるように思える)。

小生は、必ずしも日本人の特徴の全てを自虐的に否定する必要はなく、誇れる部分はどんどん世界に誇るべきであると思う。

ただ、この空気支配は日本人の弱点の一つとして、脱却・克服されるべきように思う。
簡単に達成できることではないであろう。

しかし将来いつの日か、日本人が「空気」に警戒の姿勢を見せる風習を身に着け、本書を見て「何で山本氏は空気の危険性なんてあたり前のことを、こんなに全力投球で一生懸命語っているんだろう」と言えるようになる日が来ることを望む。

何よりそのことは、故山本七平氏が一番望んでいるのではいだろうか。

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