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青が散る (文春文庫 (348‐2))

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青が散る (文春文庫 (348‐2))の商品レビュー

5.0 こんな小説は、他に殆どないです。
本嫌いの人にお勧め。
よくあるイケメン&美女ばかりの割には内容がショボイ日本ドラマや、
ピンチになりながらも結局上手く行くマンガに嫌気が差した方にもオススメ。

小説がいかに面白く夢中になれるものかがわかり、分厚いページ数が減っていく悲しさを実感できる小説です。
5.0 エヴァー・グリーンの輝きを放っている青春群像小説の代表作だといえましょう
文庫として発売以来20年間で30数刷を数えるほど愛読されている宮本輝氏の代表作の一つです。

大阪郊外に新設された私立大学のテニス部を舞台としており、主人公の椎名燎平とその仲間たちの青春群像が描かれています。宮本氏は昭和40年代前半に追手門学院大学でテニスに明け暮れた日常を送られたので、そこでの体験が本作のベースになっています。

作者自身のあとがきの中で、「『青が散る』は自伝小説ではなく,青春という舞台の上に思いつくまま創りあげた虚構の世界」だそうですが、登場人物の生き生きとした会話や描写は臨場感溢れるもので、登場人物の中に読み手が自己を投影しながら、昭和40年代前半の大学生達の生き様を追っている内に最後まで引き込まれていきます。この文章表現力は流石に芥川賞作家の力量が伺えました。

登場人物の中でも輝く存在である夏子への燎平の真剣な思いが、最初からラストまで貫かれています。それに、テニスに打ちこむ中での友情や挫折、友の自殺、などを盛り込みながら、ストレートな青春ドラマが展開されていきます。燎平の生き方はとても不器用ですが、直向でもあり、誠実でもあり、共感できる部分も多かったですね。

未熟さや不安定さや不器用さや挫折というものを背負うのが「青春」時代の定めだと思いますので、若い登場人物の心の揺れ動きを見ていますと、多くの読者にとって「あの頃」の思い出とオーバーラップするところもあるでしょうね。多感で傷つきやすいという青春の特性が、世代を越えた読者の共感を呼び起こしているのだと思います。

『青が散る』という題名が意図する様に,失恋や別れは「青春の影」の象徴でもあるでしょうから、登場人物それぞれが紆余曲折の中で上手く成就しえなかったものが「散る」に繋がっていくのでしょうね。青春時代に失ったものの大切さを浮きあがらせていくのがメインテーマだと感じました。
5.0 夏子と燎平
夏子と燎平は、青春の象徴だと思います。
「青が散る」は、夏子と燎平の出会いからその決別までを描いています。二人は無垢であり、不器用で、それ故に傷つきます。それは読者にとって、自分を重ねることのできる、身近で共感できる恋愛です。
20歳前後、子供でも大人でもない時期に、誰でも燎平が夏子に恋するように誰かに恋した経験があるはずです。イノセンスな燎平に自分を見いだして、切ない気持ちになるのだと思います。
物語の最後に夏子は彼女の分厚い殻を破って求愛します。胸を打つシーンです。一方燎平は二人の人生が重なり合うことがなかったことに気がつきます。お互い愛し合っていて、それは気がついているのに、燎平はそこで別れを決断します。
この恋愛で燎平が下した最初の決断は夏子との別れです。若さとは「大事なものを失うこと」でしょうか。
別れていく二人に、読者は、若さ、青春を見ます。その儚さが美しく、心を打つのだと思います。
あんなに大事な出会いはなかった、でも若さ故に逃してしまう。
青春の苦さとは美しいものだと、本作を読むたびにつくづく思います。
5.0 大切にしたい一冊
この本は一年前に読みました。ちょうど主人公が大学に入学する年齢と同じ時です。かなり長めだったので、ちゃんと読めるか不安だったのですが、読み始めたら止まらず、一気に読破してしまいました。
サッカー以外のスポーツは邪道(すみません)と勝手に考える僕でさえ、テニス部に所属する彼らの魅力にはどんどん引き込まれていきました。さまざまな出来事が起きて、それに向かっていく人たちに素直に共感がもてます。僕が同世代だからかもしれませんが、その辺が宮本さんの文の良さのひとつではないでしょうか。
宮本さんの作品に登場する人間は、ほんとに、深いな、と感じます。

僕にはもう少し、青が散るまで時間がありそうです。
その後に、またこの作品を読んで、今と違った見方ができる僕がいるかもしれません。楽しみです。
5.0 オブラートにくるまれた青春の喧騒
 自身でありながら、どこに向かうかも知れない「命」の流れに翻弄され、身を切る鋭角な感情が交錯する季節、互いに傷を残しながら、その痛みには気付かない。何かの拍子に立ちどまり、あたりを見回すとき、痛みはやってくる。冷静に過ぎた時間を振りかえる。

 本書との出会いは、おそらく、他の読者よりも遅い時期だと思う。24歳のときに初めて読み、喧騒のただ中にいては書けない、直線な時間を経験してなければ書けない、清潔な文体にひかれた。その後、29歳で読みかえし、35歳でまた読みかえした。わたしは、この本を何かの節目ごとに読んできたのかもしれない。

 夏子と燎平を前に、ペールが自らの歴史を話す場面が好きだ。異国で年老いたこのフランス人は「命」という言葉を使う。老人が、豊富ではない日本語の中から懸命に選んだ、この言葉が印象深い。

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