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「メディアの興亡」のジャーナリスト杉山隆男が手がけた短編集という興味で本書を手に取った。 あれから20年、緻密な取材と迫力ある筆致で新聞社のコンピュータ化最前線に迫った作者は、味わい深い短編小説の書き手として再び姿を現した。 「卒業写真」は、次期役員の噂が空振りに終わり部長職すら追われた50男津村が主人公。地下鉄のホームで偶然中学の同級生に声をかけられた津村は、そのことをきっかけに過去の自分を振り返り始める。優等生で要領は良かったが冷たいやつ、という自己分析。出世コースから外れた瞬間に周囲の人々が離れていったのも、昔から自己中心的で人望がなかったことが原因ではないのか、所詮俺はその程度の人間だったのだ、という弱気。 ところが再び会った同級生の言葉に主人公は救われる。「先頭を走る津村に引けをとりたくないって思ったから、頑張ってこれた」。 そして主人公は思う。“おき忘れてきた自分がいる。他人が覚えているのに、自分は覚えていない自分がいる。記憶の中の自分だけが、すべてではないのだ。他人の中で息づいている、知らない自分もいる”。 表題作の「汐留川」も50男が同窓会をきっかけに小学生の頃の自分を振り返る作品だ。50代とは人生の夕暮れ時を前に、あらためて自己を確認する、そんな年代なのだろう。そして、それは悪いことじゃない。50にもなって小学校の頃の初恋の相手にそわそわ胸ときめかせる、そんな気持ちもとてもわかる気がする。