すべての愛犬家に
愛犬を亡くしました。16歳と9ヶ月でした。詩歌の才の無いわたしには、他の方の詩歌をリフレインして悲しみを堪えることしかできません。
この著作は「ハラスが死んだあと、あんまり悲嘆にくれているのを見かねて・・『それならいっそその思い出を全部書いてしまわれたらいかがですか』とすすめ」られて書いたものであると「あとがき」にあります。
そして「私はこの文章が、犬を失った飼主の感傷以外の何物でもないことを承知している。だが、それが最も愛した相手であったとき、その死に人と犬との差があろうかと開き直る気持ちも私にはある。人は愛した者のためにしか悼むことはできはしない、とも思うのだ。」(「いないという事」)ともあります。
そのような著者の思いが全編に漲って(散文ではありますが)この著作は詩歌の響をともなうものともなっています。
今特に、この著作を読むことはわたしにとっての大きな慰めです。
犬好きのヨシミで推奨いたします。
犬を飼う。ありふれた事柄です。
犬なんぞどこにでも転がっています。
そのどこにでもいるイヌコロの一匹が、いざ、一緒に暮らしてみると、いつの間にやら掛け替えのない何かになります。この本には、「ハラス」と名づけた柴犬との暮らしが淡々と綴られています。山で生じた失踪事件もありますが、多くは日常の出来事が描かれています。しかし、描かれている犬へと向かう感情はたいへん深いものがあります。
犬と暮らし、犬とともに年を重ね、ともに年老いていく。
そうした中で得られる、その深いものが日常の出来事の中に滲み出ていて、この本を読む者はこころ打たれます。
文庫版の方が売れているようですが、ハードカバーのこちらを手元に置いて、だいじに繰り返し読んで欲しいですよね。中野センセ。