続きが気になる
北森氏の作品は、それぞれにいろんなカラーがあって、どれも楽しめる作品なのですが、これもまた一押しです。 読みすすめていくと、真犯人の見当はある程度ついてしまうのですが、それでもこの先はどうなるの?と続きが気になって、どんどん読みすすめていってしまうのは、やはり文章のうまさでしょう。謎のかけ方が絶妙なんですね。
『顔のない男』の正体はもちろん知りたいけれど、それを追う原口&又吉刑事のコンビについつい感情移入してしまいます。若い又吉くんの気持ちも分かるけれど、ちょっとくせのある原口刑事もいい味出してる。
長篇とはいいながら、連作短編集なんですね。一話ごとの間に挿入されている”風景”は文庫書き下ろしだそうです。これによって、謎の解き方が変わりますね。単行本で読んでいたら、どんな感じだったかな。
余談ですが、小説の中にちょっとだけ”三軒茶屋のビアバー”が登場します。北森ファンにはお馴染みですね。マスターは出てこなかったけれど、北森氏の作品を読むと、いろんなところでなじみの顔にあえる、という別の楽しみがあります。
読後、すっきりするような後味が悪いような
「空木精作」という男が殺された。刑事の原口と又吉が担当した殺人事件の被害者は、過去の人のつながりが見えない男だった。たまたま見つけた手がかりから事件の捜査を進めていくうちに、原口と又吉は新たな殺人事件に次々と遭遇することになる。厭な事件ばかりが続く連作短編集。
ふと気づくと、誰の目線で事件を見ているのかわからなくなっている。
最後の七話目になってくると、誰が誰だか、何が何だか、どの事件がどうだったか、混乱の極みになる。
それぞれの話の間に、犯人に近い人物たちの登場する「風景」が挟まれて、ようやく個々の事件の『顔』の目鼻立ちがわかってほっとする。
叙述トリックのミステリなので、じっくり文章を読むと面白い。
ただ、本当に厭な人ばかりが出てきて、厭な事件を起こすので、後味が良くない。文章とか構成とかじゃなくて、登場人物のせいで。