まずファンなら買い。そうでなくても買い。
書き下ろしの中篇です。
一連のエマノンシリーズの読者ならば安心して読める
クオリティーの作品だと想います。デュアル文庫の中でもこの作品や前作「かりそめエマノン」
などは短編より長く長編より短い「ノヴェラ」という
カテゴリーに分類されていていますが
2作品ともたしかになんかちょっと物足りないような。
少し中途半端な読後感がある気もします。
話も設定も良いのでこの点が少し残念であり
その点が☆一つ減点、という評価をさせていただきました。
とはいえ、最初に言ったとおりファンなら安心して楽しめる
クオリティーですし、そうでない方もこの機会に
既刊の一連のシリーズを手にとってみることをオススメします。
すこしの物足りなさは「余韻」ということで・・・
私もまろうど(客人)
この作品は今までのエマノンシリーズとは少し趣が異なっています。
たいした事件は起こらないし、エマノンも直樹も、難しい思想は語りません。(直樹って名前はとても好きです。だって私の憧れの先輩のプロデューサーと同じ名前なんだもの)。その代わり、描写がとても丁寧になっていて、改行や句読点の位置、
文章のリズム感などが非常に優れていると存じます。
地味ではありますが、エマノンが好きな方は必読です。
少し話は変わりますが、鶴田先生の表紙イラストのエマノンは
「なにかに立ち向かって」います。
激しく強い意志を持って、こちらを凝視している、その瞳は何を見つめているのでしょうか?
私は、しばらくして表紙のエマノンに話しかけてみました。
彼女は、まっすぐな視線を反らすこともなく、
静かな、でもはっきりした口調で「私は戦うの」とだけ言いました。
私は「エマノンは誰と戦うの? もしかして私? それともヒカリ?」とおそるおそる訊ねました。
すると、彼女は長い髪をさらりと払って「違うわ、私の相手はセシイさんじゃない」と言い、少しうつむいて銘柄の判らない両切りのタバコに火をつけました。
私もカプリスーパースリムメンソールを出して吸おうとしたら、彼女は慣れた手つきでジッポのライターを出して、火をつけてくれました。
私は、しばしの沈黙に耐えられなくなって、
「華氏451度って本が自然発火する温度だよね」と見当違いなことを言ってしまいました。
エマノンはタバコを口にくわえたまま、しばらく考えている様子でしたが、
「本は焼かれるべきものじゃないわ、本はみんなの思い出なの、それは生きているうちに、自分のお墓を建てておくのに少し似ているわ」と呟きました。
でも、私はお墓に入る気はないです。
私の骨は細かく砕いて、エンパイヤステートビルの屋上から、ばらまいてほしい。
私はジェット気流に乗る細かい灰になって、オレンジとバラ色の黄昏で世界を包むでしょう。
そんなことを想ってぼおっとしていたら、彼女は私に「戦う時は手伝ってくれるわね?」と言ったので、私は黙ってうなずきました。
エマノンは軽く私の頬に唇を寄せて、それから踵を返して、どこかへ消え去ってしまいました。
でも、エマノンは、いつか必ず私に助けを求めてくると思います。
それまで、どのくらいかかるのかは解りませんが、私は待っています、エマノンが来る日を……。
梶尾先生の作品では「エマノン」が一番好きです。
どんどん続編を刊行してくださいネ、それでは失礼します。
