じわじわと心を捕まれるような。
この話を読むと、人は自分として生きるためにどうすべきか、自分の生きる糧ってなんだろう、なんてことを考えてしまう。そんな話です。この話の主役の一人、鳴瀬は才能があって財産もあって、ルックスもよく、何もかも持ちあわせているように見える。
それなのに、何か他人には伺い知ることができない情熱で自分の望むものを渇望する。
その近くにいるもう一人の主役、中田は、彼が何を思っているのか、不気味に思ったり自分の損得を考えたりしながらつきあっているうちに、どうしようもなく惹かれる部分があることに気がつく。
こうした、自分の意識のところとは別にどうしようもなく動く感情というものを描くのが上手い作者ですが、この話も、所謂恋愛感情などとはまた別のところで、けれどももっと強くもっと上のところで精神的なところが人間に与える影響というのを鮮やかに切り取っています。
また、創作物というものとその作者というのは切り離して考えられるのか、その考え方ゆえに作品が生まれるのではないか、など考えさせられます。
そして、読者もいつの間にか外見や持っているものとは別の意外な鳴瀬の一面に惹かれていくのです。
派手ではないが、じわじわと後からくる感じがとてもいいです。おすすめです。
絵も大人っぽくて上手い。特に、青年を描くのが上手いなあと思います。