テロにもマスコミの露悪趣味にも負けないジャーナリスト
2002年1月、9・11後の混乱が続くパキスタンで取材中だったダニエル・パール氏(当時38歳)が何者かに誘拐され、1ヶ月後に無残にも斬首される様子を撮影したビデオが送られてきました。
著者マリアンヌ・パールは、夫と同じく世界各国を飛び回って取材する行動派のジャーナリストでした。
本書は、この誘拐事件の捜査に携わった強い心を持つ人たち(マイティ・ハート)の行動記録であり、パール夫妻のジャーナリストとしての信念を伝えるメモワールです。 ダニエルとマリアンヌは、取材中に様々な憎しみに出会いましたが、二人は、そんな憎しみに負けることを拒否します。特定の教義から自由でありたいとするダニエルでしたが、テロリスト達はダニエルがユダヤ人だということを理由に「イスラエルのスパイ」と断定し、最終的に殺害しました。
妊娠中だった彼女の「悲嘆にくれる様子」を取材したがるマスコミに対し、彼女は毅然とした態度で接します。
好奇心丸出しで「あなたは(惨殺の)ビデオをご覧になりましたか?」というCNNの有名キャスターに「あなたは本当に無礼な方ですね」と言い返し、マリアンヌはテロリストたちに向かって宣言します。
「負けたのは、あなたたちです! あなたたちは彼の命を奪ったけれど、
彼の魂を奪うことは一瞬たりともできなかったのです。なぜなら彼の
魂は私のなかで生きているのですから」
著者は夫ダニエルのジャーナリストとしての信念と行動を明らかにするために本書を書きました。
事件の謎を追うストーリーの展開は(不謹慎かもしれませんが)良質のサスペンス小説のような緊迫感があります。読む前から悲劇的な結末を知っていても目を離すことができません。15カ国語に翻訳され、映画化も決定しました。訳者によれば、ブラッド・ピットとジェニファー・アニストンの競演の可能性が高い、とのこと。