買う価値があると思います。 お勧めします。
大変な力作です。 伊高浩氏の『キューバ変貌』と比べても、ものの見方のバランスの面でも、参考にしている資料の量の面でも上を行っているように思います。 今まで出たCUBA関係の本のなかではもっとも良い作品かもしれない。 バランス良くフィデル、そしてCUBAの社会を描き出しています。 (のちに述べますが)監訳者あとがきを先に読んでしまったが為に、本文も親カストロかという先入観を持ってしまいましたが、決してそんなことはありませんでした。 例えば90年代前半の状況について“多くのキューバ人は、既知の悪魔といる方が安全だと感じていたのである。”というように書かれていますが、 この表現などはまさにその通りだと感じます。 日本の田中三郎元大使の本は、あまりにも抽象的なカストロ像=哲人王をつくりあげてることに終始し、キューバの現実にほとんど触れていませんでした。 盲目的な個人崇拝から描き出される本ははっきり言ってあまり読む価値がない。 私は<欧米では・・・>という欧米崇拝主義が大嫌いですが、残念ながら同じ元大使でも、全く質が違うことが露呈してしまったように思います。
ひとつ指摘できるのは、この本には種本からごっそりと引用している部分が多い。 例えばAndres Oppenheimer氏の『Castro's Final Hour』と、 Norberto Fuentes氏の『Dulces Guerreos Cubanos』から多くの逸話が取り入れられています。 ほぼ完訳なので、引用の注を載せていないのは良くない。 もっとも氏が完成前に急逝しており、原稿に最後の手を入れることができなかったとのことですので、ある程度仕方がないことだとは思いますが。 遺族や協力者によって出版されたようですが、彼らに引用箇所を特定させるのは難しいでしょう。
幸い私は多少なりとも英語とスペイン語ができ、INTERNETのおかげでいろいろな書物を取り寄せられるので
、それらの種本も読んでいました。 しかし、現実問題として大多数の日本人にとっては原典にあたるのはなかなか難しいでしょう。 またそれぞれ個別の話題だけを読んで見てもその背景がわかっていないと理解できないことがたくさんあります。 レイセスター・コルトマン氏の本のように様々なテーマが系統的にしっかりとまとめられた本が日本語で出版されることはとても有意義なことだと思います。
書物やメディアから得られる知識を全て集めたとしても、正直レイセスター・コルトマン氏より優れた本を書くのは大変難しい。 今後誰かがキューバについて何か書く際、自分自身のキューバでの実体験を反映させていかなければその記述に深みが生まれてこないと思います。 レイセスター・コルトマン氏の場合外交官であった為に、フィデルたちと直接会って話ができる反面、一般の民衆との接触がどうしても制限されていた。 一般のキューバ市民の生活や思いについては又聞きのような話が多くなっている感が否めません。 レイセスター・コルトマン氏の描ききれていないものをさらに深く突き詰めて書いていくことは価値のある仕事となるでしょう。
ちなみに監訳者が岡部 広治・日本キューバ友好教会名誉理事長というひとで、このひとのあとがきが完全に完全な親カストロの視点から書かれています。 このあとがきを読むかぎり、この監訳者は本の価値をまったく認識できていない。 キューバ政府の主張に対する盲目なる追従をしているように思えます。 真の友好関係とは、相手のよい部分のみを見るのではなく、時には例え相手が嫌がるようなことであってもあえて苦言を呈することができるような関係を言うのだと思います。 それができないのであれば、その友好は偽りです。
