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フランス現代思想を精力的にこの国に紹介してきた著者による論文集。2004年以降、著者が性格をそれぞれ異にするさまざまなメディアに発表した論考が、「理論的な領域」・「国家主義の諸形態」・「世界を見る眼」という三つのテーマにしたがって編みなおされている。 ラカンにはじまり、デリダ、ジジェク、アルチュセール、ガタリ、ネグリ、ハート、ベンヤミン、シュミット、パース、ベイトソンといった、広義の思想家たちのテクストを渉猟し、カフカやT.S.エリオットといった作家たち、はてはイエメンやトルクメニスタンといった「ポスト社会主義」国家の現状にまで目配せをきかせる幅広い問題意識には、ただただ舌を巻くばかりである。多面的な一書ではあるが、しかし、ラカン言うところの「ル・サンボリック」なる領域が現代社会においてもつ意義と射程とを測定することがおそらくは筆者の本書における主たる関心で、この関心にしたがって、上に列挙した、一見すると連関を欠くかにみえる思想家たちがひとつの「星座表/布置(コンステラシオン)」のもとにテンポよく再配置される。であるから、ともすればこうしたタイプの論者にはありがちな衒学的ないやらしさは微塵もなく、むしろ筆者の良識的な左翼知識人としての真摯な姿勢が本書からはうかがえる。 ただ、「〜の…という概念は○の×という概念と同じである」式の記述があまりに多いところは、読み手の嗜好によって好き嫌いがわかれるところかもしれない。