小説家になってからの生活を想像させてくれる本
第47回日本推理作家協会賞を受賞した著者による、三章立てのエッセイ?
HowTo本?です。この企画に対し、当初著者が思いついた題名は
「稿料格安締切厳守 作家のなりかた なってから」だったそうです。
実際の内容は、この当初案のほうが正しく表しているという印象を受けました。
一章・二章が「なってから」(小説家と担当者のやりとり・どんな生活か等)
三章が「なりかた」(新人賞の選び方等。取って当たり前とか書いてある……)
になります。
一・二章で全体の2/3を占めており、どちらかというと「なってから」が
メインだと思いました。
真剣に小説家を目指している人の参考になるのはもちろんのこと、
小説家というよくワカらない生き物に関心がある人の読み物としても
おもしろい一冊です。
ちょっとブルー
作法論についてもっと詳しく書いてあるのかと思ったのだが、そこにはまったくといっていいほど触れられておらず期待はずれだった。サイクリック投稿法(落選した作品をすぐ別の賞に応募する)は、各賞の募集原稿枚数がまったく同じのときにできるのであって、同じ作品を次々と違う賞に使い回すなんて方法は普通はできないと思った。
ちまたの、小説家になるためのハウツー本によくあるように、本書でも小説家になることの難しさが説かれている。あまりにも現実的な暗さがにじんでいて、読むとややブルーに。明るい希望を持って小説家を目指したい人には、本書はおすすめしない。
生活観とユーモアあふれる作家稼業入門
本書の内容は主に、以下の3つに集約される。
第一は、新人賞をとることが出発点ということで、複数の賞に応募する「サイクリック投稿法」等新人賞のとり方が説明されている。例えば次のような実践的アドバイスがある:①地方公共団体や、出版とは無関係な法人が主宰する新人賞は、仮に名のとおった小説家が選考委員になっていたとしても、受賞経験が小説家のキャリアとしてはカウントされない。
②自分のデビューしたいジャンル以外の本を意識して幅広く読むこと。
③「コピー劣化」の法則と言うのがあり、手本にした作品を越える事はできない。
第二は、受賞後の編集者とのつき合い方、同業者組合に入るべきか、税金はどう処理するかなど生活者としての小説家について細かく書かれている。
第三は、転職して作家になろうかと思っている人のためのアドバイスが豊富にある。脱サラして小説家になるなら、サラリーマンのあいだにクレジットカードは入るだけ入っておけ、奥さんに働かせるなら家事はしっかりやれ、などなど。著者は、タイトーというテレビゲームの会社の営業をしていたが、上司と折りあり悪く脱サラを決意、宅建と行政書士の資格取得と小説執筆を並行してこなし、資格がとれたので1年後に会社を辞めたのが27歳。ところが、賞に落選し続け、小説のスクールに通うなどして結局デビューをしたのが31歳。だからと思うが、「デビューするまでは(してからも)、決して会社をやめてはいけません」とアドバイスをしている。
文章はテンポが良く、ユーモアたっぷりで一気に読める。