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自分の嗜好(著者は回顧しながら「本能」という言葉を使う)への漠然とした懐疑。幸いにもその懐疑は自分を貶める否定的な感情を伴ってはいなかった。その懐疑の一端が20代の末に氷解する。つまり、性同一性障害だと自覚するにいたるのだ。 そして30代半ばに達して著者は本書を執筆(カミングアウト)した。小さな世界(新宿2丁目)で「類似」?の嗜好をもった者に囲まれて生きるに留まらず活動範囲を広げていくとしたら。あるいは、サッカーにも関わって生きていきたいという自分の夢を実現させるとしたら。当然、課される「女としてのふるまい」。。。 一人の人間が新たな人生のステージに上がるために、これまでの自分を総括する(自分がどんな人間なのかを暫定的にせよ確定させようとする)。手垢のついた表現だが、自分に正直でいたいためにこそ本書は執筆されたといえるだろう。 であるがゆえに、本書は中途半端な印象を与える。女子サッカーの様子についても、「同性愛」や性同一性障害の記述についても、あるいはまた、家族との葛藤についても。まぁ、人生とは小説ほどドラマティックではないし、表現の技量の問題もあるから多くを著者に求めるのは酷だ。むしろ問われるべきは、編集者の「必要な」方向付けが売らんかなのイロモノ趣味が濃いことだろう。削除すべきところともっと書き込んでもらうべきところが根本的に間違っている。 女子サッカーについては、「エルゴラッソ」紙上にて、宇都宮徹壱氏がフォローの取材を敢行している(07年3月17日号、同年3月21日号、スクワット発行)。そちらを参照の事。