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ヴォイス (西のはての年代記) (西のはての年代記 2)

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ヴォイス (西のはての年代記) (西のはての年代記 2)の商品レビュー

5.0 文字のない世界
前作と時も違えば場所も違う、今回は西のはてオルド人による侵略がすすむ「アンサル」の地が舞台。
かつては大学や図書館があり、文化の都だった「美しく賢いアンサル」と呼ばれたが、今は破壊された瓦礫の街。
文字を持たないオルド人の支配下にあるため、書物はすべて焼かれ、本は魔物と同一視され恐れられていた。

「道の長」の住まいガルヴァマンドに住む「オルド人との落とし子」少女メマーが主人公。
向学心に燃え、オルド人への復讐を生きる証にしている少女、メマー。
そこへ前作の主人公オレックとグライがハーフライオンを共に登場します。
オルド人のガンド・イオラスの客人として詩を朗唱するために来たというが…
徐々に人々の気持ちが復讐に、解放に、動きはじめてゆく…。

成長したグライもオレックも素敵ですが、
今回はメマーが素晴らしい。「秘密の部屋」も魅せます。
久しぶりに一言一言味わいたい小説を読んだという感じ。
気持ちの節々に染み渡る。こういう本をずっと味わっていたい。
次も楽しみです。
5.0 オレッグとグライ&「読み人」メマー
「ゲド戦記」のル=グウィンの新シリーズ「西のはての年代記」の第二巻です。
第一巻の「ギフト」から二十年くらい経っています。オレックとグライは、旅を続けながら、オルド人に占領されて奴隷のように扱われているアンサル市へやってきます。このアンサルの人々の心の支えとも言うべき「道の長」の娘メマーが主人公です。彼女は、文字を教えられ、「道の長」の後継者として「読み人」として育てられています。オレッグ、グライ、そしてハーフライオンのシタールと協力して、アンサル市の解放に活躍します。その契機となるのが、お告げ(「ヴォイス」)です。
この本を通して、ル=グウィンは「文字(言葉)」の持つ「力」の大きさを語りかけています。アンサルの人たちは、オルド人に禁止された「本」を懸命に隠します。解放後には、オルド人に「文字」を教えようかという冗談まで出てきます。
又、唯一の神を信仰し、それを押し付けるオルド人を批判しています。自然のすべてに敬意を表すべきだと言っているようです。
第三巻「POWERS」の訳が待たれます。
5.0 ル=グイン、がんばってます。
 ル=グインのファンタジーやSFは独創的な世界を創造していてそれが魅力なのなのだが、だいたいにおいて雰囲気が暗く、前作の『ギフト』もそうであった。ところが、今回の『ヴォイス』はその暗さを感じさせない。外国軍隊の占領下にある古い港湾商業都市アンサルを舞台に、兵士によるレイプで生まれた女の子を主人公とし、占領軍とアンサルの人々の軋轢を描き続けながら陰鬱な調子に陥らないのである。それは例えば「ライオンを従えた美女」だとか「歌の力で人々を立ち上がらせる詩人」だとか、ル=グインにしては分かりやすくシンボル化されたキャラクターが配されているからかもしれない。物語の途中で『ギフト』の主人公が登場して活躍していく物語展開も楽しめる。
 ここでの占領軍は砂漠からやってきた一神教を奉じる尚武の民なのだが、アンサルの人々が礼拝している多神教の神々を忌み嫌っている。それ以上に彼らは「本」を忌まわしきものとして焼き払い、人々に本を持つことを禁止している。誇り高い民ではあるが、征服した土地の文化に対しては徹底して無理解であり、自分たちの神に対しては狂信的ですらあるという設定について、現在のアメリカが泥沼にはまっているイラク情勢の影を読み取ることは容易だろう。非寛容な一神教をル=グインはここで力強く批判し、あらゆる場所に神々の遍在を見て礼拝の対象とする多神教のあり方に深い共感を示しているように見える。
 ル=グインといえば『ゲド戦記』が有名だが、ジブリの映画版に対しては不満を表明して「私たちの心の闇は魔法の剣の一振りで追い払えるものではない」「ファンタジーでも政治でも善と悪との戦いについては人を殺して解決するのが普通かもしれないが、私はそうは書かなかった」「単純化された問いに対する単純化した答えを私は与えていない」などと口を極めて批判を行い、日本のあちこちのWebサイトでも紹介されもした。この批判が行われたのとほぼ同時期に『ヴォイス』が米国で出版されていることには注目したい。この作品にはル=グイン流のスタンスが見事に貫かれおり、この小説自身がジブリ版『ゲド戦記』に対する力強い反論となっているのである。物語は善と悪の戦いに単純化されないし、ボスキャラが最後に殺されて事態が解決されるわけでもない。それでも事件は起こり、ファンタージーのお約束事としてクライマックスで不思議な力は発現し、歴史のコマは進められ、人々は戸惑いながらも行動し、苦難の中にも慰めを見出しながら生きていく。お勧めの一作。

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