グールドらしい徹底検証の姿勢が気持ちいい
人種や性別の違いによる人間の優劣評価という「測りまちがい」を検証する事で、誤りを指摘し正しい結論を導くという筆者お得意のパターンだ。 ほんの100年前まで欧米でまかり通っていた人間の優劣評価の基準が脳の容量や顔つきであるとは、あまりに稚拙で驚き呆れてしまう。しかも自分の主張にあうようにデータをねじ曲げるご都合主義。現在もなお残る知能指数IQでさえ、試験方法の試行錯誤こそ努力を感じるが、実施方法や用途のすり替えが行われていたとはまったくお粗末である。
筆者は論拠となる測定データを再評価・再試験し、偏りのない統計処理をすることで「有意差がない」という結論を導き出す。この姿勢はどの分野でも共通の学問の基本動作であり、ともすると過ちを犯してしまいがちな先入観を除くには重要だ。検証過程は執拗で、実に筆者らしいアプローチである。
後半に出てくる統計データの相関をどのように評価するかというくだりは、私には目新しい議論であり興味深かったが、ボリュームもあるうえやや専門的で、せっかくの面白さが半減したのが残念だった。
時代を超えて生きる本です
生物学的な人間観は、差別や偏見がつきまとう。人種にランク付けをしたくて、躍起になって頭蓋骨の容量を測定したり、脳の大きさを測定したり、容貌や身体的特徴の中に犯罪者の基準を探したりする科学者の姿は、滑稽というより哀れです。グールドさんは「人間とは何か」との問いかけには、直接明快な答えは書いてくれてません。しかし、人間をこのように見てはいけない、ということをはっきりと痛快に書いてくれています。この書で私グールドさんのファンになり、彼の著作を読むようになりました。