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眼球譚(初稿) (河出文庫)

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眼球譚(初稿) (河出文庫)の商品レビュー

4.0 見ること、さわること、それ以上のこと
 いや、すごく面白かった。

 眼球譚という名前ではありますが、視覚から触覚への躄の文学であるように思います。バタイユは視覚から触覚へにじり寄っていく、否むしろ、視覚を触覚へとまろめこんでゆく。眼球を舐めさせる仕草に見られるように、「みること」は「さわること」によって舐め取られてゆきます。

 円い尻、その尻に挟まれる卵、皿に並べられた牛の睾丸、そして切り取られた眼球。
 球形の滑らかな形状は、触覚の甘美な記憶を呼び起こします。触覚とは確かな実在感覚であります。同時に安住できる感覚でもあるように思われます。

 最後に見られる「眼窩から取り出された眼球」が象徴されるように、見るものつまり眼球は、切り出されることによって見られるものへと転化し、そしてそれはつかみ上げられることによって触られるものに変容します。それらを撫で、つかみ、噛みつき、挟み、性器に入れる。それらは実在を手の中に入れようとする営為なのではないでしょうか。
 しかしながら真の実在感覚、言葉を換えると「なにかがある」「誰かが居る」「わたしが居る」感覚、なるものは、対象を触ることによっても、舐めることによっても、噛みつくことによっても、性交することによっても、また視覚の主たる眼球を、どうにかすることによっても得られるものではありません。
 第一部、とくに最後に見られるような乾いた明るい不毛は、現代における生および性の不毛を示して余りあるのではありますまいか。徹底的な涜神、徹底的な逸脱、そして性。死による性。死に基づく性。性に籠絡された死。ここから再びOrthodoxに飛び上がれば生は、また性は回復しうるのでありましょうか?しかしこれらはそもそも、そこからの逃走の試みなのでは?

 もうひとつ、この作品に出て来るもので印象的なのは「ほとばしる尿」なのですが、まるで交響曲におけるシンバルのように(そう、双方とも黄金色!)鮮やかに場面にアクセントがつけられます。出て来る場所も、ああこれがチャイコフスキーの音楽ならこの辺に入るだろうなあという適所を得てシャーと入れられます。
 尤も回数的にはやや飽和している印象もあります。よろず小便がつきまとうというのは面白い営為でバタイユさんが好きなの分かりますが。第二部で言い訳してもダメです。

 個人的には第二部以降は要らんような気がします。
 シューベルトの未完成交響曲に説明的な第三楽章がついているような違和を感じます。
4.0 エロチック文学って言うジャンルがあったけど
イレーヌのコンとかO嬢とか・・そんな中で1番シュールで面白かったのがこれでした。
眼・・見る・見られる・・そのための器官である眼。逆に読んでいる自分自身の屈折した精神やリビドー いや抑圧された性的衝動すべてが露わになっていく気がしました。
難しく考えることはありません。貴方自身の心の中覗くために是非1読を・・・
4.0 眼球(球体)を主軸とした作品
本作は、とにかく眼球(球体)を主軸とした、幻想小説だ。構成はと言うと、第一部は、不可解のまま通り過ぎた謎(例えば、根本にあるバタイユ自身、何故眼球にそこまで執念を抱いていたのか)、第二部に入ると、その謎が金メッキを剥がすようにボロボロと剥がれ落ちてくる。読者は、きっとこの剥がれ落ちる瞬間に一種のオルガスムスに達するのではないだろうか。(私もその中の一人だ)
あまり、詳しく喋りだすと読者に申し訳ないので、最後にこれだけは伝えたい。バタイユに少しでも興味がある方、普通の小説に飽き始めた方も然り。この文を読んで少しでも気になった方もまた然り。是非読まれる事をお薦めしたい。ただ、ページ数の割には、値段が高く感じられたが、本書はそれ以上の価値を持っているのは、言うまでもない。
5.0 エロテシズムの極致、三部作の一
 この作は、「死者」「マダム・エドワルダ」と並んで、エロテシズム三部作である。バタイユの最重要書物の一つだ。
 エロテシズムすなわち性なるもの=聖なるものは、「死」と「狂気」を媒介としなければ、成立する事無く、徹底孤独ながら、《他者》との連続性を求める、矛盾したものだ。
 日本人で正しく理解した小説家は、三島由紀夫ただ一人、…あとは皆が知っているとおり、エピゴーネン「亜流」ばかりがだらだら続く。
ロジェ・ラパルトによると格調高い精緻なフランス語で描かれているらしい。原語で読んでみたいものだ。
5.0 視覚の相対化
近代とは身体のあらゆる感覚の中で
視覚が過大に重視された時代でありました。
この著作は視覚への偏りという社会の歪みが
バタイユを通して表現されたものだと思います。

あらゆるものを原初の闇へ
視覚が意味を成さぬ闇の中へ。

理解を深めたい方は
塚原史『ダダ・シュルレアリスムの時代 』
ジョルジュ・バタイユの眼球
を読まれることをお勧めします。

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