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マグラアの持つエレガントな不気味さを、翻訳家の宮脇孝雄氏(クライヴ・バーカーの訳者としておなじみ)が見事に訳しきった。(パトリック・マグラアの名が、パトリック・“マグラス”と、誤って伝えられなかったのは、同氏の功績によるものである) 19の短編からなる本書は、『血のささやき、水のつぶやき』からの再録が13本と、アンソロ本からの再録が3本。初出は3本のみだが、この秀逸な3作品のためだけでも、新たに買い求める価値がある。 「マグラアの作品をまだ読んだことがない」という読者には『スパイダー』などよりも、むしろこの短編集をおすすめしたい。
ゴシック的なホラー作品やSF的な寓話なども悪くは無いのだが、 語り手の精神的な歪みを描いた作品や犯罪を扱った作品が とても真に迫っていて面白いと感じた。 著者の父は精神医ということであるが、なるほどなと思った。 特に心に残ったのは、語り手の語る物語の最後になるまで、 奇妙な出来事だとか、語り手の周囲の人々に非があるように思わせ、 真実が判ってくるうちに、語り手の妄想や病んだ心に気付き、 最後にあっと驚かされるという手法の鮮やかさと怖さである。 例えば、『もう一人の精神科医』の語り手の精神科医によると、 同僚の精神科医がかなり異常で問題のある人間に思えるが、 実は、本人が一番恐ろしい人間であると判るラストにはぎょっとした。