テーマはいいのだが
扱っているテーマは、どれも科学のメインストリームから一見はずれているようで、それでいて実は非常に奥深く、なかなか結論が出ないものばかりで、興味はつきない。
マーチン・ガードナー、アシモフ、あるいはロゲルギスト、寺田寅彦などがお好きな方なら、きっと気に入る本であろう。ただしこれだけテーマ的には面白い本なのに、翻訳が直訳調で日本語としてこなれていないために、読み進めるのが非常につらい。翻訳をされた方には敬意を表するとしても、もう少し文章を工夫して欲しかった。
「日本語の良し悪しなど気にしない」という方にとっては星5つでもいいくらいの本だが、実に惜しい。
常識の中の疑問
精神医学や生理学の話はとてもおもしろかった。なるほどとうなずきの連続だった。講談社ブルーバックスの「そうだったのか」に劣らない面白さだ。しかし一つ、どうしても納得いかないこともある。最後の永久機関に関する話は納得いかない。著者はパソフ博士の真空エネルギー研究を批判しているが、著者は本当にパソフの論文を読んだのだろうか。パソフの主張を丹念に吟味したのだろうか?真空エネルギーそのものはニセ科学ではない。ちゃんと真空からエネルギーが取り出されているし、まだまだ未知の分野なのである。ただどうも真空のエネルギーは取るに足らないほど小さいのであるらしいが、これもまだ未知な領域である。パソフ博士はなぜ真空エネルギーが宇宙飛行に利用できるほど大きいのかうまく答えられていないのである。私はパソフの論文を片っ端から読んだが、彼は周囲からの批判を無視してないし、自分の理論がエネルギー保存則に矛盾しないことを示す論文も投稿している。ただ彼は少し飛躍しすぎているのである。しかしパソフは同時に慣性の起源に関する興味深い説を提案している。確証はないが著者は内容うんぬんよりも、相手がパソフだから批判をしているのではないだろうか。