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眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎

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眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎の商品レビュー

3.0 訳者の表現力に期待
プリオンが催すBSEやそれにまつわる脳の病気を描いた作品。
世界各地のそれぞれの地域で発生した脳の病気の事例を紹介し、それについて専門家や学者が分析している。
作品自体の焦点のあて方は悪くはなく、現代でも確固たる治療法が確立されておらず、不治の病として難病に指定されているこれらの病気にスポットを当てて描いたことは興味深い。
私はこれらの病の専門家でもなければ、医療の知識の断片すら持ち合わせていないが、事例を中心に描かれているので知識がなくても読み進めていくことができた。
ただ、訳者はスキルの高い翻訳者であろうが、読んでいて訳本特融の機械的な感じは拝めず、読んでいて苦しいと思う事があった。
その点で★3つとした。
5.0 なんとも衝撃的な理由でした
中年以降になって不眠症となり、悶絶しながらそれでも意識ははっきり保った状態で死を迎える、そんな病気がある一族に繰り返し発生します。
果たしてこれがウイルスが原因なのか、遺伝なのか?
そしてニューギニアのある種族に発生する、クーリーと言われる病気との不思議な類似性。
そしてその病気を追いかけていくと、「食人(カニバリズム)」と言う習慣が浮かび上がります。

現代ではほとんどの種族でカニバリズムは行われていませんが、過去に於いては、どこの種族にも見られるごく普通の習慣でした。これが狂牛病を引き起こした原因と結びつくことを、予想出来た人はほとんどいないでしょう。
そう言った意味ではとにかく衝撃的です。
4.0 プリオンタンパク質入門
原題は「The Family That Couldn't Sleep -A Medical Mystery-」

眠れない一族、致死性家族性不眠症の紹介を皮切りに、
未だに謎の多いプリオンタンパク質に関する事柄が
上手くまとめられています。

邦題に、原題には無い「食人の痕跡」だの「殺人タンパク」だのを付け加えたり
「A Medical Mystery」を「医学推理小説」と訳して、
それを帯や巻頭に載せているせいで、随分と損をしていると思います。
特に帯の煽り文句が良くない。(このページの画像には載っていませんが)

『クールー病、スクレイピー、狂牛病、致死性の不眠症…をつなぐ鎖とは?
 80万年前の食人習慣がすべての始まりだった!?』

って、全くそんな内容の本ではないじゃないですか。

私は人から薦められて購入したのですが、
表紙の怪しげな雰囲気の絵のせいもあって、
「牛や羊の病気のはじまりが、80万年前の食人習慣?」
「推理小説?ダヴィンチ・コードとかの類?」と少し不安で、しばらく放ってありました。
店頭で見かけただけならおそらく購入しなかったでしょう。

ちなみに、描かれている「謝肉祭でペスト医の扮装をする人」は
本筋と関係のないところで、ちょろっと出てくるだけ。
食人に関する記述も最後の推論の数ページ。
そんなところを膨らませて無理矢理怪しげな演出しなくたっていいのに。
良い内容なのに勿体無い。
5.0 サイエンスライターあるいはジャーナリストのあるべき姿
メディカルミステリーと言う範疇らしい。
読む限りにおいてはドキュメンタリーなのだが評者が無教養なためにフィクションの部分があるかどうか分からない。
しかしである、原著者のプリオン病に対する思いいれの凄さは、情報収集として巻末の引用文献等の専門的科学論文や日記あるいは報告書の数としても分かる。
話は致死性家族性不眠症(FFI)と言うやがてプリオン病の一種と同定されるイタリアのある家系に現在なお起こっている悲劇の病からはじまる。
プリオン病はスクレーピー(1820年代から羊)、BSE(いわゆる狂牛病、1980年代より社会問題化)、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease:CJD)、クールー病(パプアニューギニアにおける食人習慣による疾病)等が知られている。またBSEから人への感染による変異型クロイツフェルト・ヤコブ病が昨今大きな話題にもなっている。
本書では本疾患等に関連してノーベル賞を受賞いた二人の生き様も描いている。ガイジュシュック(業界ではガジュセックと書くが訳者は発音を確認してこれが正しいようだ。1976受賞)とプルジナー(1997受賞)である。
ガイジュシュックはクールの研究に従事したパプアニューギニアから多くの少年を連れ帰り(56人)、その内の一人から性的虐待で訴えられ有罪となり服役した。本書の中ではその背景となる現地での儀礼的同性愛にガイジュシュック自身も参加したいたと日記などを元に記載している。
プルジナーに関しても紳士的でない科学者の態度を多くの証言から得て「プリオン研究のゼネコン」と揶揄されていると書いている。
ドロドロとした研究業界の舞台裏をこれでもかと言うほど見せつけてくれる。
また日本人の遺伝子型がプリオン病に罹り易いホモ接合体であることが何気に書かれているのが気になった。(欧米はヘテロ接合体が多い)
5.0 もう一つのテーマ「眠りとは何なのか?」
ブリオン蛋白質によって発症する遺伝病FFI。BSEが牛の共食い飼料に原因があるとされ、
それでは有史、人が人を食うという事実では何が起こっていたのか?そしてBSE牛の遺伝は?

ということが主軸で中世まで遡り、異常蛋白と人間の食文化、儀式を再検証する
が、FFIの最大特徴である「不眠」についての描写が僕には何より恐ろしかった

人間は人生の三分の一は寝ている。ある年齢を超えると、心地良く眠ることは
闊達に起きている歓びと等価になる。眠れない、眠らせないというのはしばしば
拷問の一つとして使われてきた方法であるほど眠りは人間の心身に影響する
眠っている間、眠りが素晴らしいとは感じない(それは日々空気を吸っている
ことが素晴らしいと感じないのと同じだ)。しかし、都会から清涼なる土地に
移動して胸いっぱいに呼吸をすることで心身が回復するのを感じるように、
生を自覚するからこそ、生を無自覚化する(無意識化ではないにせよ)眠りは
生物の機能なのだ。それを先天的に失うことが分かっている人生とは、何と
恐ろしいことだろう

鬱病の重要な治療法に「ただ、寝る」ということがある
僕も年に1,2度の軽度の鬱を感じると2日ばかり、ただ寝る
すると何となく回復する

生物は同種の生物を食べない。その禁を犯したBSEは、しかし、史上、人類にも
人類が起こしてきたことにも数多くあり、その報いが「不眠」とは!

夜中、ゆっくりと本書を解きながら、心地良く眠れるというのは何とも皮肉な
喜びである

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