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漢文の素養   誰が日本文化をつくったのか? (光文社新書)

漢文の素養 誰が日本文化をつくったのか? (光文社新書)

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漢文の素養 誰が日本文化をつくったのか? (光文社新書)の商品レビュー

5.0 漢字文化を理解するための最高水準の啓蒙書
 まさか40年以上前の学校時代の漢文を思い出すことはまずないと私は思っていたが、バンコクで猛烈な下痢になったときは別であった。漢方薬系の下痢止めを手にしたら、説明書がすべて中国語で書かれていたのである。必死になって漢文を読み下し、処方量や時間を間違えることなく急回復した。あのときほど漢文に感謝したことはなかった。帰国の便で、機内で香港の新聞を手にしたら、わりとすらすらと内容がわかる。アジアの旅行・生活では漢文は共通財産であることを何度も実感するが、本書は日本史を語りつつ、数千年の尺度で漢字の歴史を素人向けに丁寧に物語ってくれる。
 「貝と羊の中国人」を読んだとき同様、その博覧強記には再び驚かされるが、どちらかと言えば、本書は一般への啓蒙に重点が置かれている。史記についても多少触れてあり、“司馬遷は自分の見識と合致する資料だけを使い、合致しない資料や異伝は切り捨て”とあるが、列伝の方は必ずしもそうでないし、誤解を読者に与えやすいので、著者の史記についての見解もいつか詳細に知りたいものである。
 「貝と羊の中国人」でよく見られた、研ぎ澄まされた知性の刃、一流の歴史家に必須と言える“狂気の香りを放つ知性”は本書にはない。しかし、孤立語の中国語、屈折語の英語、膠着語の日本語の3つを自由自在に駆使する著者の驚異的な能力はそれだけでも十分に魅力的であり、これからの世界的な教養とはそうした異質言語への造詣なのかもしれないと感じさせられる。
 助詞が不可欠な膠着言語の日本語は、孤立語の中国語とは本質的にあわないが、直観的な理解や発想の豊かさを漢文学習を通じて摂取できるという点では小中高校で積極的に漢文授業を増やしていくべきかもしれない。むしろ近隣の国だとか、次は中国経済の時代とかという世俗的な理由は控えめにするか排除した方が世間の反発も少ないように感じる。

 
5.0 漢文が構築した日本の基礎
漢文、がいかに日本の基盤となっているかを説いた本。
読んでいて面白い。

まあ古代は漢文が主流だったということぐらいは知っていたが、近世あたりでも十分力を持っていたというのはなかなか驚き。
古代も、いかにして漢文が吸収されていったか、などは興味深い。

個人的には、明治維新のころ、西洋の用語を日本語に訳すとき、たくさん新しい日本語が作られたが、その訳語の決定のために漢文の力が大きかったということ。
例えば中江兆民は、訳を作るためにわざわざ漢文を習いなおしている。

東洋のエスペラント、というのも、現実問題どこまでいけるかは不明だが、夢はあって期待したくなるところ。

読んでみて損はない本である。
4.0 4章までで、十分の価値あり。5章以降は読まなかったことにします。
 前半が面白かった。特に3章までは叙述も緊密で、古代日本への漢字の伝来、装飾としての使用、4C頃からの「日本漢文」の形成、漢文訓読の始まりについての推論、奈良期の漢字文化導入熱などが分かりやすく概説されている。続く4章「漢文の黄金時代」は奈良・平安期を扱い、トピックスが羅列されたような構成のため少々散漫な印象もあるが、内容は興味深い。しかし中世から近現代までを扱う5章以降には漢文の果たした役割の重要性、漢文を消化吸収した日本文化の優位性を訴えるあまり、「ハァ?」な記述が目立ち出す。
 例えば昭和天皇が日本の敗戦の要因を語った言葉「第一、兵法の研究が不十分であった事、即孫子の、敵を知り、己を知らね(ママ)ば、百戦危うからずという根本原理を体得していなかったこと」を、「漢文の古典『孫子』の素養がたりなかったことを、最大の反省点としてあげられている」「為政者に漢文的センスが欠けていたことが敗因の第一、という反省は、戦後の日本の政治に生かされたであろうか?」(p222)と受けるのだが、そりゃ話が違うだろ(笑)。
 あるいは「かつての日本の強みは、中流実務階級が優秀で勤勉だったから。彼らは江戸から明治にかけて、『生産財としての教養』として漢文をもっていた。ところが、現代日本の中流実務階級は、そのように強力な教養のバックボーンを失った」(p225)までは良い。しかしそこから、漢文的素養を見直そう(p227)、現代の若者が漢文学習を退屈がるのは、英語のようにコミュニケーションの道具として教えないからだ(p231)、漢文教育を国語の教師だけに任せるな、中高教科書に理系の知識欲も刺激する漢文を入れろ(p233)となると、正直言って随いていけない。
4.0 見えないものに気付かされる
普段何気なく使っている漢字,そして日本文化の成り立ち,そんなごく当たり前の事柄の奥には長い歴史の積み重なりがあることに,改めて驚かされる書である.ともかく全編が面白く読めた.伊藤博文や乃木希透典も漢詩を作り,大正天皇にいたっては千数百首を詠んだというのだからびっくりである.
5.0 日本を今の日本たらしめた漢文の力について、平易な文体で語った良書。
本書では、中国から伝わってきた漢字文化が、日本でいかにして受容され、
吸収され、昇華されてきたのか、古い時代から順を追って説明している。単
に学問の成果としての漢字文化の変遷を述べるのではなく、筆者自身の所見
や、様々なことばの語源などが上手くちりばめられており、漢文を専門とし
ていない人にとっても興味深く読めると思う。

例えば、馬という字の訓読み(うま)は和語だと思われているが、実は古代
中国語の発音がなまったものであり、厳密には漢語であるということ、「日
下」という苗字を「くさか」と読むのは、「草加」という地名が「日のもと
の」という枕詞をつけて呼ばれたことに由来するということ、などは、特に
興味深かった。

また、江戸時代が300年間続いたのは、徳川家康が漢文の力をうまく利用した
ためであり、そこで蓄積された漢文の素養が日本の素早い近代化を可能にし
たことなども、非常に説得力をもって述べられている。

他にも興味深い話はたくさんあるので、ぜひ一読をお勧めしたい。

僕らが当たり前のように享受している現在の生活は、実は漢文無しでは成り立
ち得なかったのではないか。そう思わされるほど、日本における漢文の恩恵の
深さを考えさせてくれた一冊。

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