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高学歴ワーキングプア  「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)

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高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)の商品レビュー

5.0 近い将来、真っ先になくなるであろう教育機関
 本書では、おもに博士号を取った人や大学院博士課程にいる人たちの不幸な現実が書かれています。高度な知識人を輩出する教育機関が、失業者やニートやフリーターを大量に排出しているとのことです。現実では本書が出版された時期よりも、さらに悲惨な状態になっているのではないでしょうか。

 来年の2010年度からは大学院に進学をする人は激減すると思います。深刻化する少子化問題の中、さらに昨年からの大不景気で、大学生も社会人もとても大学院に進学するお金も時間も余裕がないからです。法人化した国立大学の経営がかなり厳しいと新聞にも書かれています。先に法科大学院も司法試験合格率の低さから定員を減らすと発表されていました。大学院の未来はお先真っ暗といっても過言ではないと思います。

 そもそも、“号”は今の厳しい世の中に一体全体何の価値があるのでしょう。「ノーベル賞って何?」と小学生に聞かれたら、ノーベル賞はたくさん賞金もらえるし世界中の人から賞賛されるよ、と答えられますが、一方、「修士号や博士号って何?」と聞かれたら何と答えればいいのでしょう。車やバイクの運転免許では、営業や配達などでお金を稼ぐことができますが、修士号や博士号をもっているだけではお金を稼ぐことができません。“号”は資格や免許などの人々の生活に密着したものではないからです。

 もし、修士号や博士号を取った出身大学が廃校になったら、倒産した会社の株式を持っているのと同意義になるのではないでしょうか。このように、近い将来、大学院は少子化と大不況下で真っ先になくなるであろう教育機関であると思います。また、このエコな時代に無駄のかたまりの教育的シンボルであるともいえます。作者の大学院の現状を世の中に公表した勇気から星5つとしました。
2.0 衝撃的な題名な割には、薄い内容。
博士課程とそれ以降の人達を扱った書としては内容はとても衝撃的です。あるひとつの真実かもしれませんが、本書を読んでまず感じたことは、紹介されている不遇な人達の多くが(著者も含めて)、自分が置かれている状況を他人のせいにしすぎていることです。国のせいでも教授のせいでも、ましてや経済不況のせいでもありません。自分の判断がすべてです。自分の判断の誤りを他人のせいにしている時点でアウト。なるべくして「プア」になったと言えます。いろんなケースはありますが、優れた高学歴者は生き残るべくして生き残っています。
4.0 良書でした

仕事がら、大学の先生方とつきあう機会がある。その際に、必ずと言っていいほど先生から話すことで話題になるのは、ドクター・ポスドクのキャリアパスとしての処遇の話である。それを聞きながらいつも思うことは、就職先がないのにもかかわらずなぜこんなにドクター(博士)を持つ人が多くなったのかということであった。その疑問に対する答えが、この本には書いてある。曰く、「文部科学省と東京大学が結託して、大学院重点化政策の名の元に、大学院へ進学する大量の学生(収入源)確保を図ると同時に、一流大学の大学院卒の研究者が二流・三流大学の教員ポストを独占することによって、全体の教員ポスト需要数とドクター供給数が著しく乖離したことによって、大量のドクター・ポスドクのフリーターが発生した」と断言している。これほど分かり易い説明はないであろう。

ただ、筆者の説明は、大学院のうち修士課程(前期博士課程)卒と博士課程(後期博士課程)卒を説明上あまり明確に分けていない。卒業時の就職(特に民間企業)に問題があるのは、博士卒のみの場合であって、修士卒は全く問題にはならないことを恐らく”あえて”触れていない。また、著者が理工系博士卒と、文科系博士卒では事情が少し違うことも恐らく”あえて”触れていない。理工系博士卒は、民間企業の研究所の研究職も選択肢があるので、文科系博士と比べて問題は多少改善される。

こうした点を割り引いても、明確にかつ具体的に問題となった要因を指摘している点で非常に秀逸な作品である。もう少し前に読んでいればよかったと後悔する程である。ただ、筆者の指摘するこういった現状を鑑みると、結局、「一流大学以外の学部生は、修士課程には行っても、決して博士課程には進学するな」という結論に落ち着いてしまうのではないだろうか。いまの大量のノラ博士(ノラ猫・ノラ犬の様な)がいる現状は、残念ながらとても打開できそうにはない。
4.0 違和感も覚えるが、有益でもある本
 本書には、次の違和感を感じました。
(1) 大学や学部によって状況が異なるにもかかわらず、少ない事例を紹介することで、すべてを説明しているかのような断定的な書き方をしていること。
(2) 大学院重点化によって、博士の増産が起きれば、相対的に大学教員への道は狭き門になることは誰が考えてもわかること。それを文部科学省や大学の大陰謀のように書くのはいかがなものか。
(3) 前半の博士ワーキングプアが発生している現状の糾弾部分と、後半の博士課程教育や博士の見識の礼賛は、あまりにトーンが違いすぎて少しびっくりする。後半のように、博士が有能で、実社会に適応できるものであれば、悪いのは文部科学省や大学ではなく、実社会に出て行かない博士たちの方ということになってしまうのでは?

 このように、違和感を感じる部分もあるが、それでも、
(1) 実際に、有能な若者たちの人生が無駄になりかねない深刻な問題が生じていること。
(2) 結果的に、私たちの税金が無駄になっていること。
(3) 文部科学省は、早期に、(ポスドク支援施策のようなどっちつかずの施策でなく)、博士が民間に出て行ける方向の手が打てなかったのか。
など、憤りをもって、高学歴ワーキングプア問題を感じ取れる有益な本でもある。すべてを鵜呑みにするのは危険かも知れないが、一読には値する本と思います。
2.0 人文系の視点でしょう
大学院重点化政策による博士の増産などについては理論的に説明されている。
が、具体例が乏しく、また表現が曖昧で誤解を招きやすい部分も多い。
理系と文系、大学や学部によって事情が全く異なるにも関わらず、それについて殆ど明記されていないので、高校生などの世知に乏しい若年者にとって必ずしも良書とは言えない。
具体例として出てくる人々は主には人文系の履修者ではないかと思われる部分がある。一部の大学院の一部の学部や学科では、研究職への就職率が10割に近いところもある。本書において、文理一緒くたにして「超氷河期な」就職事情を述べることによって、若い世代の夢や希望を摘む結果になってはならないと思う。
ちなみに当方医学博士。医学部の院については一切、制度もシステムも履修年数も違うことさえ触れられていなかったので、リサーチ不足のまま書かれた著書の印象が否めませんでした。

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