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著者が評論集『黄色い部屋はいかに改装されたか?』において 標榜した、論理のアクロバットと名探偵の復活の実践を試みた作品。 なんといっても特徴的なのは、各章の冒頭に四行にわたる 小見出しをつけ、ヒントや伏線の所在を明確にしているところです。 のちに倉知淳氏が『星降り山荘の殺人』において、この趣向を取り入れてますが、 ミステリにおける完全なフェアプレイにこだわる著者が必然的に編み出した形式といえるでしょう。 また、本作において著者は、極力メロドラマを排したかったと述べていますが、 登場する人物自体はみな、魅力的です。 探偵をやる気がない探偵である物部太郎をはじめ、その助手で実務能力に長けた片岡直次郎、 そして依頼人であり、清楚で凛としたヒロイン・早苗など、それぞれしっかりとキャラクターが 構築されており、十分「キャラ読み」にも耐えますw ちなみに、前述の3人の人物をモデルにしたと思しきミステリを米澤穂信氏が 〈古典部〉シリーズとして書いているので、読み比べてみるのも一興かと思います。 内容に関しては、意外性も十分な犯人の哀切な動機に胸をうたれました。 現実にはあり得ない特異な動機とも思うのですが、それまでの 犯人の描写から、しぜんと説得させられてしまうのです。
トリックではなく、ミスディレクションを作品の要とした作品。 発表当時における本格ミステリ界のエポックメーキングといえる。 また、とにかく働きたがらない探偵役と 行動力あふれる優秀な助手という組み合わせの 意表をついた非常に魅力あるキャラクター作り。 しかし、残念なことにストーリーがさほどおもしろくなく、 上の2つのアイディア、魅力を活かせていないのが残念。 本格ミステリの歴史上、意義ある作品ではあるので、 その意味で惹かれる人に薦めたい。