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◆「菊の塵」 明治の世に、武士道を貫こうとする夫婦の物語。 病床に縛られ、屈辱の日々を送っていた元軍人の夫の死から浮かび上がるのは、 歴史の闇の中でくすぶり続ける人の妄念と業です。 歴史的事件を背景にした大胆不敵なトリックも、犯人の切実な犯行動機と 不可分に結びつき、十分な説得力と言い知れぬ余韻を生んでいます。
本書は、連城三紀彦の初期を代表する<花葬>シリーズ全8編のうちの3編と、ユーモア・ミステリー連作「陽だまり課事件簿」を併録しての復刊である。 まず<花葬>シリーズ3編である。3編が3編ともそれぞれの時代背景が、現代ではなく、明治・大正・昭和初期と絶妙の設定になっていることが大きいと思う。ここからすでに読者は連城三紀彦のフィールドで勝負されているのだ。 そして、世間に知られているうわべの情報が切々とうたわれる。 −女たらしの男に妹を弄ばれた兄の復讐「花緋文字」、 −政治家の妻と書生の道ならぬ恋、そして心中「夕萩心中」、 −報国の情が嵩じた末の軍人の自害「菊の塵」、 実はこれらは、作品でいうと、連城三紀彦ならではの流麗なレトリックの前哨戦とでもいうべき段階で、そこからさらに研ぎ進められて初めて驚くべき真相と、大どんでん返しが見えてくる仕組みになっているのだ。私はいずれもすっかり幻惑されてしまった。 <花葬>シリーズは、「戻り川心中」など、残る5編を加えて全8編、まさに日本のミステリー史上に残る傑作だと思う。 次に「陽だまり課事件簿」の3話だが、ユーモア・ミステリーとされていて、一応登場人物たちが個性的だったり、会話や設定がウイットに富んでいたりしているが、ミステリーとして伏線もしっかりしているし、解決も論理的に纏まっているし、それなりに十分楽しめた。