自分語りの音楽ガイド
読みながら『ザ・コミットメンツ』の中の「アイリッシュは、ヨ
ーロッパの黒人なんだから」という(ような趣旨)のセリフを思い
出した。なんで白人がR&Bを演奏するんだ、という問いに対して
の答えである。
この本には筆者の個人的なエピソードがたくさん出てくる。そん
なのガイドには直接、必要ないわけだが。でもそれこそが、なぜこの曲を、このアーティストを推薦するのかという理由に厚みを加え
ている。「何年に発売」「チャート何位」「ブラックミュージック
史の中での位置づけ」……そんなデータの羅列じゃ、マニアならざ
る人の心は動かないわけですよ。自分の来歴を語り、それとブラッ
クミュージックとの関連を語る。筆者がその時いだいた感覚に読む
側が共感を抱いたとき、初めてリアリティをもってブラックミュー
ジックが響いてくる、という仕掛け。
そもそもブラックミュージックに対してはアウトサイダーに過ぎ
ない日本人が大半なわけで、ガイドブックにリアリティをもたせる
ためには自分語りをせざろうえなかった、と勝手に思い込んでます。
あ、でもデータも充実です。
こんな気楽な、でも熱い音楽本。最高でした!!
一瞬、その分厚さに躊躇したのもつかの間。うんちくが書いてあると見せかけるタイトルとは裏腹に、
実は紹介アーティストにまつわる著者のエッセイがちりばめられた
力の抜けたレビューで、
ぐいぐい読めてお勉強もできるステキな本でした。
著者の音楽愛を最も感じたのは、うんちく本にありがちな絶版CDを紹介するなどということなく、思い立ったらすぐ手に入れられるような現行ライン満載のご紹介。
「まずベストを買ってみるのも…」なんてレビュー、優しいじゃないですか!!
良い音楽を多くの人へ、という心意気のつまった一冊だと思います。
超・大満足!!
読み物としてもガイドとしても良い、音楽好き向け図書
ブラックミュージック(以下「BM」)って、好きが昂じると、だんだんワイン通的な世界にはまりがちな気がする。「何年にリリースしたアルバムの録音からバックバンドに誰々が加入して、それからリズムがこう変わった。」とか。そういった情報は、それはそれで興味深いんだけど。かといって、一応BM好きとしては、「そんなの知ってるよ!」という初期情報だけが詰まっている本は買う気がしない。その点、この本は、過去に聞いた曲の多寡に拘わらず、「読書」の範疇でも楽しい本。著者は、あとがきでも「ガイドブック(以下「GB」)は書く気がしないがGBの有用性は否定しない」旨記しているが、まさにその言葉どおりの本だと思う。GBとしては、データもさることながら音の風景や味が伝わってくるのがイイ。塩分何%と言われても料理の味は伝わらない。音楽もそう。加えて、著者の人柄なども伝わってくる。多分、著者は、フロアでOHIO PLAYERSのFunky Warmがかかっても、DURAN2のThe Reflexがかかっても踊(れ)る人だと思う。